Barrelhand(バレルハンド)はアメリカ西海岸、サンフランシスコに拠点を置く日本未上陸の時計ブランドだ。創業者・CEO兼チーフエンジニアのカレル・バチャンドは、アメリカ航空宇宙局(NASA)にあるエイムズ研究センターで微小重力装置のシミュレーション開発に携わっていた技術者であり、10年以上にわたり、デスクトップ3Dプリンターの有名メーカーでマネージング・ディレクターを務めた経験がある人物だ。
3Dプリンティングのエキスパートであったバチャンドは、時計製造が革新的なソリューション・プラットフォームになるのではないかと考え、このアイデアをもとに、 起業家でパイロットで時計愛好家でもある、マイケル・ソーキンとともにバレルハンドを創設し、2014年に時計製造に足を踏み入れることになる。
バレルハンドはプロトタイプを作るための技術として3Dプリントを活用し、従来の時製造のプロセスを劇的に簡略化することに成功する。プロトタイプ完成後、次の課題となったのは、アメリカ国内で時計を生産できる人材を見つけることだった。彼らは2年以上の歳月を費やして米国内の才能ある機械工や職人からなる新しい生産基盤を確立。2020年にバレルハンド初のタイムピース、プロジェクト・ワンの生産が開始されることになる。
Barrelhand(バレルハンド)
プロジェクト・ワン
プロジェクト・ワンは、金属パーツ加工の限界を超えた精度で3Dプリントできることを実証し、新しい時計製造パラダイムを導くことをコンセプトにした時計。人間の髪の毛の4倍の細さでプリントされた3Dプリントスチールを素材に使用している。
スチール製とチタン製のチャプターリングとラグはすべて3Dプリントされており、従来の製造方法では作れないユニークな幾何学的特徴となっている。 ケースの直径は44mmで厚さ15mmのチタン製。スイスのエテルナ社製キャリバー3901Mを改良したムーヴメントを搭載。世界初の3Dプリントによるブリッジを搭載したほか、リューズリリースシステムも3Dプリントで製造されている。手巻きで毎時2万8800振動(4Hz)、パワーリザーブは50時間。 ジャンピングアワーと独創的なリニアミニッツ機構(分表示)を備えている。
時間はジャンピングアワーで表示され、12時位置のアワーディスクの真下にある小さなラインマーカーが現在の時刻を示している。6時位置にあるリニアミニッツで分を表示しており、1時間ごとに分マーカーがピラーの下まで下がり、再び上昇するスプリットスケールを採用。0~30分は下降時、31~60分は上昇時に表示される。
上向きの黒い矢印の上に小さな拡大鏡があり、拡大鏡が白色を表示している場合、左側の白色の数字、オレンジ色を表示している場合、右側のオレンジ色の数字で確認することができる。
7年の歳月をかけて開発されたプロジェクト・ワンは、10本のみ生産で価格は3万ドル(約404万円)で完売している。購入層は世界中のウォッチ・コレクターとテクノロジー愛好家だったそうだ。
現在、バレルハンドはプロジェクト・ワン ウォッチ製造で学んだことを、宇宙探査に必要な機能を備えた新製品群へ応用しているそうだ。 バレルハンドの新作は2023年に発売予定なので、興味のある方は継続的に公式サイトをチェックしてみてはいかがだろうか。
》Barrelhand(バレルハンド)公式サイト
https://www.barrelhand.com/
文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
https://www.instagram.com/spherebranding/
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