太めのアラビア数字に太い時分針。そして外周にはレイルウエイ・ミニッツインデックスを配したスタイルは軍用時計をイメージさせる代表的なミリタリーデザインだ。時計はアウトラインのミリタリーType1940
かつての軍用時計を現代に再現したミリタリーデザインの時計は総じて人気が高い。理由は、無駄な装飾もなくシンプルでいて時間も見やすい。そして古典的で落ち着いた雰囲気ながら適度に存在感もあってファッション的にも合わせやすいという利点がある。加えてやはり軍用として開発されたため男らしさを感じるところも男性にとっては大きいのではないか。
では、腕時計のミリタリーデザインとはどのようなものなのだろうか。筆者が刊行するアンティークウオッチの専門誌「LowBEAT(ロービート)」でも4年以上という長期連載で、当時の軍用時計を各国軍別に取り上げてきたが、実際の軍用時計の歴史を辿っていくと、第一に視認性(判読性)を重視するために、わかりやすい大きめのアラビア数字、そして太い時分針というスタイルがかなり古くから採用されていることがわかる。デザインとしては至ってシンプルでかつ明快だ。
そして、そんなミリタリーデザインの基本形を示したものとして、やっぱり1940年代(正確には1944年以降)にイギリス軍向けとして開発された管理コード“W.W.W.”。通称“ダーティ・ダース”の存在が大きいと思われる。
“W.W.W.”は、軍用であるための条件として、第1に“防水性能があること”に加えて、“15石の手巻きスモールセコンドムーヴメントを搭載すること”、そして“黒文字盤で夜光インデックスを採用し、ケースのベルト取り付け部分がハメ殺しであること”といった規格が定められていた。なおW.W.W.とは“Water proof Wrist Watch”の頭文字からとったもので、防水腕時計を意味する。
1940年代半ばにイギリス陸軍向けに開発され、裏ブタには“W.W.W.”の管理コードが刻印されている通称ダーティ・ダース。12社の時計メーカーが同様のデザインで製造している
当時、この製造を手がけたのは、すべてスイスの時計メーカーだ。具体的に名前を挙げると、ビューレン、レマニア、ティモール、ジャガー・ルクルト、シーマ、オメガ、バーテックス、レコード、IWC、ロンジン、エテルナ、そしてグラナの計12社にも及ぶ。つまりこれがダーティ・ダースの愛称で呼ばれるゆえんとなったのだ。
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