時計界における世界3大ブランドのひとつに数えられ、260年以上という現存する最古の時計ブランドとしても知られるヴァシュロン・コンスタンタン。同社はこの長い歴史のなかで数々の傑作モデルを生み出してきたが、今回フォーカスするのは、周囲の視線を釘付けにするデコラティブなケースを採用した1950年代製モデルである。
■K18PG(32mm径)。手巻き(Cal.458/3B)
このモデル名は“ヘルム”。調べたところヴァシュロンの文献にも、確かに1951年にリリースされたものとしてしっかり載っている。当時のヴァシュロン自体、数あるブランドのなかでもデコラティブな印象が強いが、それにしてもひと際異彩を放っていると言えるだろう。
この“ヘルム”とは船の舵を意味している。つまり船の操舵に使うハンドル(ステアリングホイール)、日本で言うところの“舵輪(だりん)”を模したデザインというわけだ。それにしてもよく見るとかなり作りも手が込んでいるのがわかる。しかもこの個体、オリジナル本来のケースのエッジがしっかり残っているため、恐らくほとんど使用されてなかったのではないかと思わせるぐらいにケースコンディションもすこぶる良い。また、当時のヴァシュロンでピンクゴールド素材というのも大変珍しく、コンディションや素材ともに貴重な1本と言えそうだ。
舵輪のグリップ部分とホイール部分、そしてケースと三つのパーツから作られており、ケースと一体成形でないぶん立体感が際立って見える
ジャガー・ルクルトの手巻きムーヴメントをベースに作られたスモールセコンドタイプのCal.458/3Bを搭載する。17石で毎時1万8000振動
文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修
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