アンティーク時計に傑作と呼ばれるモデルはいくつかあるが、今回は少し趣向を変えて黎明期に生まれたユニークな自動巻きモデルを紹介したい。
極太のアラビアインデックスに太めのペンシル針とどこか軍用っぽさを残し1940年代らしい趣をもつオリンピックのスポーツ。見た目はいたって普通なのだが搭載するムーヴメントが実におもしろい。この個体のムーヴメントに刻印された“BUREN GRAND PRIX(ビューレン・グランプリ)”からわかるように、40年代半ばにビューレン社が開発し、同社のグランプリに搭載された特殊な振り子式自動巻きムーヴメントが搭載されているのだ。
ムーヴメントを覆うようにラグビーボールのような形をしたハンマーが写真の上部中央にあるパーツ(自動巻きユニット)を支点にして左右に振れることでゼンマイを巻き上げるというものだ
この自動巻き機構は、ロレックスが採用する半円形のローターが回転してゼンマイを巻き上げるというものではなく、ムーヴメントを覆うハンマー形のローターが左右両方向に振り子のごとく振れてゼンマイを巻き上げるというまったく新しいものだった。
文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修
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