LowBEAT magazine

【アンティーク時計】セイコー“アルピニスト”の謎に包まれたレアモデルを発見!

 復刻モデルが発表されたことも記憶に新しい“ローレル アルピニスト”が最初に登場したのは1959年のことだ。これは普及機であるセイコー・ローレルをベースに諏訪精工舎が開発しており、裏ブタがスナップ式であったローレルとは異なり、気密性を考慮したスクリューバックを採用する。ただし、時計自体の防水性が確保されていたわけではなく、汗の侵入を防ぐウオッチパッドを備えることで防塵性と防汗性が高められていた。このアルピニストは、今日、その仕様やコンセプトから国産スポーツモデルの源流とされている。

ローレル アルピニスト Ref.14041
ローレル アルビニストの黒文字盤仕様。光沢を備えたボンベダイアルに、フレームを備えたくさび形とバーの夜光インデックスを配した意匠は極めて視認性が高い。夜光塗料はドーフィン針と秒針の先端にも塗布されており、夜光塗布のドーフィン針は、後発のモデルにも継承されるアルピニストのアイコン的意匠となっている

 そんなローレル アルピニストだが、製造期間は約2年と長くはなかった。そして、これに代わり第二精工舎が61年から製造を開始したのが、“チャンピオン アルピニスト”である。
 このチャンピオン アルピニストRef.J13033は、台形インデックス仕様とツートン12分割文字盤仕様が確認されており、それまでのローレル アルピニストからデザインが一新され、独特なツートンカラー文字盤を採用しているのが大きな特徴だ。

チャンピオン アルピニスト Ref.J13033
第二精工舎が手がけたチャンピオン アルピニストの初期モデル。クロノスの後継にあたる準高級機としてラインナップを展開したチャンピオンのスポーツコレクションという位置付けに当たるが、シンプルなデザインがベースとなるチャンピオンの印象とは大きく異なる、独創的なツートンカラーの文字盤を採用した

 さて本題はここからである。
 実はこのチャンピオン アルピニストに、ローレル アルピニストと同じデザインを採用した個体が存在していたのである。写真をご覧いただければおわかりのとおり、一見するとローレル アルピニストだが、文字盤12時方向にはしっかりと“Seiko Champion”の文字が示されている。

ローレル アルピニストとまったく同じデザインをもったチャンピオン アルピニスト

 この情報をもたらした国産時計研究家のBQ氏曰く、「現時点で確認できた個体は2点でまったく同仕様。ケースと文字盤デザインはローレルと同じ」とのこと。さらに2点とも海外で発見されたため、輸出用として製作されたモデルであった可能性が高いという。

 

 

文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修

※記事は2022年9月7日発売の『Antique Collection 国産腕時計大全 LowBEAT編集部』より抜粋しました。本書は当オンラインストアからご注文いただけます。

 

【関連記事】

■【10月10日はスポーツの日!】1964東京オリンピックにまつわる時計コレクターの秘蔵品を紹介

■【いま見ても新鮮】1970年代に誕生した国産初のラグジュアリースポーツ

■【新作時計ニュース】世界初の自動巻きクロノをオマージュ! “セイコー プロスペックス”の最新ソーラークロノグラフ

 

【次ページでチャンピオン アルピニストのディテールをチェック】

次のページへ >

-LowBEAT magazine
-,

PHP Code Snippets Powered By : XYZScripts.com