A.ムーヴメントの美しさを際立たせるグラスヒュッテ独自の仕様
今回は後編としてグラスヒュッテ様式の代表的なものとして挙げられる“洋銀製4分の3プレート”、“グラスヒュッテストライプ”、“ビス留め式ゴールドシャトン”、“エングレーブ入りテンプ受け”の四つについて詳しく取り上げていく。前編と合わせてチェックしてほしい。
①洋銀製4分の3プレート
受け板がムーヴメント全体の4分の3を覆う大きさからこう呼ばれる。1860年代にアドルフ・ランゲによって導入されたと言われているもので、歯車等をすべてひとつのプレートで支えることで、組み立てやすくすると同時に安定性を向上させる。また、その素材に真鍮ではなく洋銀を使っている点も特徴。洋銀はジャーマン・シルバーと呼ばれ、銀の代用品としてかつてドイツで作られた特有の合金を表している
②グラスヒュッテストライプ
ムーヴメントの4分の3プレート全体に施されている、美しい縦縞模様の装飾。グラスヒュッテのメーカーが使うことからこのように呼ばれる。一見、単調に思えるが波打つかのようなわずかな凹凸が付けられるなど繊細な作りとなっている。そのため光の加減で陰影が生まれ、洋銀製ならではの温かみある色合いと相まって、高級感をより高める。洋銀の特性でもある経年変化によって、淡い黄金色に変わる点も魅力
③ビス留め式ゴールドシャトン
1A(ワンエー)クオリティに定められた仕様。ルビーやダイヤモンドなどの受け石を18金の輪で固定し、さらにその輪は耐蝕性を高めるために青焼きされた三つのビスで留められている。かつてルビーは天然モノを使用していたために破損することも多く、交換の際にこの部分だけの作業で済むよう考案されたものだ。ただ現在は強度が高い人工ルビーも多く、その場合はあまり必要としない。見た目も美しく、いまや高級仕様のための装飾的な意味合いが強い
④エングレーブ入りテンプ受け
これも1A(ワンエー)クオリティに定められた仕様。テンプ受けとは時計の心臓部を固定する洋銀製のブリッジのことで、ここに手作業による繊細なエングレーブが施されている。また同時に、その上にはスワンネック(白鳥の首のような形から呼ばれる)緩急針(テンプの速度の微調整を行える針)も採用されている
文◎松本由紀(編集部)
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