意外と知らない時計知識

【Q109】ドイツ高級ブランドの機械に施される“グラスヒュッテ様式”とは何か(前編)

A.グラスヒュッテ製の高級機に施されるムーヴメントの仕上げのこと

 以前、同企画のQ68にてドイツ・グラスヒュッテ製の時計の“原産地証明”について取り上げた。
 グラスヒュッテでの手間と作業が、ムーヴメントを含む時計自体の製造原価の50%以上を占めていれば、文字盤に“GLASHUTTE I/SA”という文字が刻印できるというものだ。詳しくはQ68をチェックしてほしい。

 今回はそんなグラスヒュッテ製の高級機のムーヴメントの仕上げ、“グラスヒュッテ様式”を取り上げる。
 これは、グラスヒュッテに本拠を構えている時計メーカーが、グラスヒュッテ製の高級モデルの証として、ムーヴメントに施す美しい仕上げの総称のようなものである。

 本来グラスヒュッテ様式とは、ムーヴメントの地板や受けが大きく頑丈な作りのことを指していたようだが、A.ランゲ&ゾーネの創業者、アドルフ・ランゲが1867年に最高品質規格として明文化し、同社の懐中時計で最高ランク“1A(ワンエー)”クオリティに位置付けられる仕様を、現在のA.ランゲ&ゾーネがムーヴメントに再び採用したことに始まる。

 これが装飾としても見た目が美しく、グラスヒュッテのほかの時計メーカーも高級機に取り入れたことから、広い意味で使われるようになったというのが実情だ。
 グラスヒュッテ様式の代表的なものとして挙げられるのが、“洋銀製4分の3プレート”、“グラスヒュッテストライプ”、“ビス留め式ゴールドシャトン”、そして“エングレーブ入りテンプ受け”である。
 この四つについては次回の後編で取り上げる。

写真はA.ランゲ&ゾーネのキャリバー。グラスヒュッテ様式の代表的な四つの仕上げが施されている

 

文◎松本由紀(編集部)

 

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