ZRC(ズッコロロシェ)は近年急速に数を増やしている独立系マイクロウオッチブランドの中で、ほかとひと味違ったバックグラウンドとコレクションを展開している。
その歴史を辿ると1904年、エドモンド・ズッコロとジョセフ・ロシェによってスイス、ジュネーブで設立されたことに始まる。ガセット時計用(懐中時計)のチェーンの製造から歴史を刻み始め、その後はガセット時計を腕に装着するためのブレスレットを初めて開発したとされており、17年には伸縮可能なメタルブレスレットを開発し、ジュネーブ国際産業賞(Prix de I'Industrie Nouvelle de Genève)を受賞している。
腕時計の製造を開始して以降も堅実な経営を続けて信頼を獲得し、1958年にはフランス海軍からダイバーズウォッチの製作を依頼され、60年に“ZRCグランド・フォンド・300”がフランス海軍に正式承認された。
フランス海軍は3時位置に設置されているリューズが着用時に邪魔になる点や脆弱であることを指摘し、手首の動きを妨げずに水中でリュウズが開かないように、解決策を依頼。ZRCは6時位置にリュウズを配置したデザインを開発し、これが同社のスタンダードとなった。
“グランド・フォンド 300”は12時位置のリューズ のほかに、モノブロック・ケースを採用した点も特徴であった。ケースは海軍の地雷除去ダイバーに必要な完全な耐磁性を持つモリブデンで強化された特殊なスチールから機械加工されており、その機能性の高さから1995年まで地雷除去ダイバー達に装備されていたとされている。
初代“グランド・フォンド 300”の発表から50年後の2015年に、創業者であるジョセフ・ロシェのひ孫、ジョージ・ブリュネとチャールズ・ブリュネは、オリジナルモデルを復刻した“ZRC GF300”を発表。当時の軍用潜水時計を忠実に再現した復刻コレクションは、アンティークウオッチのコレクターをはじめ、目の肥えた時計好きから支持を集めている。
今回は、ZRCの特徴的な機能とともに、二つの代表モデルを紹介する。
【ZRCを象徴する二つの独自機構】
“イージー・クリーン・システム”は潜水後、ベゼルとケースの隙間に塩分が結晶化し、ベゼルの回転を妨げるのを防ぐ独自機構。淡水を循環させ蓄積した海塩を希釈して排出することが可能となっている。“グランド・フォンド 300”を象徴する機構のひとつで、フランス海軍の地雷除去ダイバーが直面した課題を解決するために生まれている。
“クラウン・プロテクション・システム ”はリュウズを元の位置にねじ込まないとブレスレットが正しく配置されない独自の格納式ラグシステムである。構造自体はシンプルだが、ねじ込みを忘れて水の侵入を防ぐのに効果を発揮している。