1930年代になると、様々な時計メーカーが自動巻きムーヴメントを開発しはじめた。これに対して、オメガは自動巻きには懐疑的であったといわれている。しかし、ロレックスの成功を受けてその必要性を痛感した同社は、42年、自動巻きムーヴメントの開発に着手。そして翌43年に完成した同社初の自動巻きが、半回転片方向巻き上げ式のCal.330と340である。その後、48年は、340のクロノメーター仕様341を、創業100周年記念モデル“センテナリー”に搭載し、限定で発売した。
当時、センテナリーに対する市場の反応は、熱狂的なものだったようだ。そこでオメガは、新たな柱となる自動巻きコレクションの開発を決意。こうして52年に発表されたのが、“コンステレーション”である。これは日本語で “星座”を意味する。さらに裏ブタにはジュネーブ天文台の観測ドームのレリーフも与えられていた。このことからも40年代以降、数々の天文台コンクールを制し、高精度を誇ってきたオメガにとって、コンステレーションがいかに重要なモデルであったかがうかがい知れるだろう。
全方向両方向巻き上げ式となった、オメガ自動巻きの第3世代Cal.561を搭載するコンステレーション。60年近くも前の個体だが、基本設計が極めて優秀だったため、いまも高い精度を出すことができる。
■Ref.168.005。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.561)。1963年製
初代コンステレーションは、半回転式の350系キャリバーを搭載。以降、全回転式に改められた500系キャリバー、550/560系キャリバー、1000系キャリバーと、進化とともにムーヴメントを載せ替えていくが、そのすべてがクロノメーター仕様として展開され、高精度を誇った。
手巻きの30mmキャリバーもそうだが、オメガではコストを掛けてベースキャリバーを作り、それをアップグレードして使っていくという手法を採っている。ムーヴメントに自信があったからこそ、コンステレーションは様々な価格帯にラインナップを広げつつも、“最上級ライン”として膨大な数を展開できたのだろう。ちなみに72年にはクロノメーター認定に合格したコンステレーション用ムーヴメントが通算200万個に達するという大記録を打ち立ている。
コンステレーションの最大の特徴が、全モデル、クロノメーター仕様であったことだ。60年に2万個、64年から66年にかけては約10万個ものムーヴメントがクロノメーター検定をパスしており、コンステレーションに搭載されている
結果、いまなおアンティークのコンステレーションはタマ数が豊富であり、かつ相場も割安で非常に身近な存在だ。あまりにもメジャーな存在なため、面白みには欠けるかも知れないが、“隠れた逸品”として外せないモデルなのである。
文◎編集部/写真◎笠井 修
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