1974年、セイコーは、それまでハイエンドラインとして展開していた“特選腕時計”を、“黄金の頂き”の意味をもつフランス語 の“CRÊTE D'OR(クレドール)”としてブランド化した。その後、78年後期のカタログからブランド名を“CREDOR”に変更しており、その頃から文字盤にもブランド名を記すようになっている。
主に高級ドレスウオッチを中心に展開するクレドールだったが、79年には当時の流行に合わせ、SSケース、スクリューバックとネジ込みリューズを採用し10気圧防水を実現した、いわゆるラグジュアリースポーツモデルを国産ブランドではじめて発表している。
■(右)ロコモティブ。Ref.KEH018。SS(36mmサイズ)。クォーツ(Cal.5932) (左)KZT。Ref.KZT014。SS×18KGF(37mmサイズ)。クォーツ(Cal.9461)
最も有名なのはジェラルド・ジェンタがデザインを手掛けたロコモティブ(写真右のモデル)だが、実はほかにさざ波をモチーフとした文字盤をもつKZT(同左のモデル)と、よりドレッシーなデザインとなったKZH(下の写真)の3種類が展開されていた。
直線と曲線を組み合わせたケースや、ベゼルにイエローゴールドカラーを用いるなど、ほかの2モデルよりもドレッシーな雰囲気が強調されていたKZH。
■Ref.KZH026。SS×K14YG。クォーツ(Cal.9661)
ちなみに、セイコーはロコモティブのデザイナーについて公式に発信したことはないが、当時複数の時計デザインをジェンタが受注して資金的な余裕を得ていたことを、過去、広田雅将氏(現『クロノス日本版』編集長)がインタビューを行った際に、周囲にいた関係者が明かしている。一方、ロコモティブと共通するコンセプトをもったKZTやKZHもジェンタデザインと噂されるが、当時の販売価格に差があったことなどから、これらはセイコー社内のデザイナーによるものだった可能性が高い。
文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修
※記事は2022年9月7日発売の『Antique Collection 国産腕時計大全 LowBEAT編集部』より抜粋しました。本書は当オンラインストアからご注文いただけます。
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