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GMTマスター II 、レフティー仕様の実機を見て感じたこと|ロレックス通信 No.163

 先日、話題のレフティー、Ref.126720VTNRの実機を見させてもらった。その感想を簡単に書きたいと思う。ご存じかと思うが、これは2022年に初お目見えした新作である。

2022年にリリースされたGMTマスター II のレフティー仕様

 何が新しいかというと見てのとおり、本来リューズと日付け表示は向かって右側に付いているのが一般的なのだが、それが左側に付いている。いわゆる左利きの人が右手首に着けることを想定したレフティー仕様という点だ。もちろんベゼルのブラック×グリーンというツートンカラーも初である。

 レフティー仕様自体は、当連載の141回でも「過去にもあったGMTマスターのレフティ(左リューズ)仕様」と題して取り上げているが、ロレックスはほかのモデルでも過去に何度か出しており、GMTマスターにおいても今回が初めてということではない。

今回借りたのは5連のジュビリーブレスタイプだったが、レフティーはなんとなく3連のスポーティなオイスターブレスのほうが似合いそうな気がした

 ただ、今回のレフティー仕様で注目すべきは、日付け表示までもが左に移動しているという点である。元来、レフティー仕様はリーズの位置が左側に来るように既存のムーヴメントを180度回転させればできてしまう。

 しかしながら、既存のムーヴメントをそのまま使うとひとつだけ不具合が起こる。それは日付け表示である。日付の数字は右側の窓で正しく見えるようにカレンダーディスクにプリントされている。そのためこれまであったレフティー仕様は、リューズの位置は左でも日付け表示だけは右側だったのである。つまり、今回はこの点もレフティー専用としてしっかりと改良されている。

 もちろん、これだけではない。具体的に明示されているわけではないが、公式資料には「日付け表示の小窓を9時位置に動かすには、さまざまな調整が必要であった。また、最終検査における時計の精度テストの工程も変更しなければならなかった」と書かれている。素人が考えるほど実際には単純な話ではないのかもしれない。

 この点に付いて修理技術者のクロノドクター・久保氏に聞いてみたが「実機は見ましたが、裏ブタを開けて中を見たわけではないので、何とも言えません。単純に考えれば基本はムーヴメントを回転して、デイト盤を作り替えればそれで済むとは思いますが、もしメンテナンスで入ってきたらぜひ細かく見てみたいですね」

右手首につけてみるとこんな感じ

 ロレックスのデイトジャストで初めて3時位置に日付け表示が設けられた背景には、ジャケットやワイシャツなどの袖口に時計のフェイスの一部が隠れても日付けだけは少し手を伸ばすだけで確認できるようにするためだと言われている。その意味では今回レフティー専用として言い切っているだけに、日付けを左に設けることは必然の結果ということなのだろう。

 さて、実際に実機を見て思ったのは、やはり日付け表示が左にある違和感だった。これはあくまでも筆者が右利きで、右側の日付け表示に慣れてしまっているからにほかならない。その点を除けば左だからどうのという特別な印象はあまり感じなかったというのが正直なところ。ただブラック×グリーンというカラーリングは派手すぎずなかなかいい感じの配色のため、右リューズタイプにもぜひラインナップしてほしいものだ。ちなみに現在の実勢価格は驚くなかれ国内定価130万9000円に対して400万円台半ばである。。。

写真◎笠井 修

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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