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修理技術者に聞いた。修理中に「あれ?」と思うパーツが使われていることってあるの?|ロレックス通信 No.161

ルビーカラーが特徴的な切り替え車。その中心部分にその下に写っている丸型ノコギリのような形状のクラッチが内蔵される(写真◎久保氏提供)

 そして最後に今回話題となった切り替え車について触れておきたい。それはロレックスの自動巻きムーヴメントを語るうえでとても重要なパーツだからだ。切り替え車(リバーシングホイール、またはリバーサーと呼ぶ)が採用されたのは、自動巻きとして専用設計されたCal.1030(初出1950年)からである。1030登場以前は、自動的にゼンマイを巻き上げるための動力源となる半円形のローター錘が、360度回転しても一方向に回ったときのみゼンマイを巻き上げる構造だった。

 それが2枚の切り替え車の登場により左右どちらに回転しても巻き上げてくれるため、当然巻き上げ効率は格段に良くなっている(実際にはほかにも多くのメリットを生んだ)。つまりこの2枚の切り替え車によってたとえローター錘がどちらに回転しても、その回転を一方向に整流させてゼンマイを巻き上げているのだ。

 そして、それを制御しているのが切り替え車に内蔵されたクラッチ(鋭い歯をもつ丸型ノコギリのように見えるもの)。この二つのクラッチは一方向にしか回転しないように規制バネで制御されている。そのためローター錘が逆回転した場合は、その一方のクラッチは滑って回転を繋がない仕組みというわけである。なお、切り替え車はルビーパウダーによって硬化処理が施されていることから、このような色になっているとのことだ。

 ちょっと難しい内容だったかもしれないが、こういった修理技術者でないと知り得ない情報も、なかなかおもしろいと思うのだがいかがだろうか。

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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