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【アンティーク時計の隠れた逸品教えます!】上級者向けだが注目される価値のあるオメガのコレクション

 かつてに比べ、アンティークウオッチの相場が全般的に値上がりしていることは多くの人がお気づきだろう。とくにロレックスのスポーツモデルを筆頭とした、人気モデルの高騰ぶりは目を見張る。確かに人気モデルを選んでおけば失敗が少ないというメリットもあるが、それ以上に価格のハードルは高い。
 一方で、それほどメジャーな存在ではないものの、完成度は高く意外にお得なモデルは探せばまだまだ見つかる。そこで、今回はそんな“隠れた逸品”にフォーカスする。

 

オメガ
ジュネーヴ

シーマスターなどにも採用された自動巻きのCal.562を搭載するジュネーヴ。参考価格15万円

 アンティーク市場が見逃している傑作コレクションのひとつに、オメガの“ジュネーヴ”がある。コンステレーションやシーマスターのようなわかりやすさはないうえ、モデル数が多いため、何が魅力なのかはわかりづらい。しかし、このコレクションのなかには、探せば傑作ムーヴメントを載せたモデルが少なくないのである。しかもその価格は、役物付きに比べてはるかに低いのだ。

 オメガがジュネーヴコレクションを加えたのは、1953年のこと。名前の由来は、ジュネーブにオメガの工房が存在していたためである。ジュネーブ天文台がコンクールを開催するようになると、オメガはここでも入賞を果たすべく、この地に調整師を集めた特別のワークショップを設けた。こうした背景から察するに、おそらく当初のジュネーヴは、高精度なモデルに付けられる名前だったはずである。しかし、やがて高精度機がコンステレーションという名前に吸収されるようになると、ジュネーヴコレクションは大きく意味合いを変えることとなる。

当初、高級ラインを企図したであろうジュネーヴは、文字盤のモデル名表記にも見て取れる。1960年代半ばまではクラシカルな筆記体だったのが、以降はモダンなフォントに改められた

 60年代半ば、オメガはコレクションの整理を断行。シーマスター、スピードマスター、コンステレーションなどに含まれないモデルに対して、積極的にジュネーヴの名前を与えるようになったのである。その結果、70年の時点で、オメガが生産する時計の60%が、ジュネーヴの名前をもつようになったのである。しかもオメガは、時代遅れになったムーヴメントの多くを、在庫処理としてジュネーヴコレクションに載せるようになった。60年代後半には時代遅れとなっていた30mmキャリバーや、560系といった名機でさえも、その例外ではなかったのである。

手巻きの傑作ムーヴメントに数えられる30mmキャリバーを搭載するジュネーヴ。参考価格各30万円

 オメガの歩みを体現するかのような、ジュネーヴコレクションの歴史。しかしどこにも属さないモデルが含められ、かつ歴史上の傑作機が載せられた結果、このコレクションには面白いモデルがいくつも残された。モダンなケースを持つ“ダイナミック”や、Cal.861をシンプルにした機械を持つ“クロノストップ”などが好例だろう。また“アドミラリティ”などのユニークなペットネームを持つモデルも存在するし、非常にレアだが、クロノメーター搭載機もある。しかもジュネーヴというだけで、どのモデルも価格はコンステレーションやシーマスターに比べてずっと安いのである。

 長らく不当な扱いを受けてきたジュネーヴ。正直、裏ブタを開けてみないと載せているムーヴメントがわからないという点では、上級者向けではある。しかし当たりをつかめば価格以上の満足感は得られるし、そのユニークなデザインは、改めて注目する価値がある。また60年代以降のモデルであれば、気楽に使うことができるのだ。そういう意味では、今後のアンティーク市場でも、もっと注目されていいコレクションとなるはずだ。

 

 

文◎編集部/写真◎笠井 修

 

【次ページではそのほかのジュネーヴを紹介】

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