デンマークの建築家アルネ・ヤコブセンや、名車アルファロメオ・アルファスッドを手掛けたジョルジェット・ジウジアーロなど、著名なプロダクトデザイナーや建築家が時計のデザインを手がけることはままある。機能主義デザインの権威として現代にも名を轟かせるマックス・ビルもそのひとりだ。
20世紀半ばに活躍したスイスのデザイナー。バウハウスでデザインを学び、建築や家具、商業デザイン、絵画と様々な分野で活躍。“バウハウス最後の巨匠”と呼ばれる。1956年にはユンハンス社からの依頼を受け、当時自身が学長を務めていたウルム造形大学の学生とともにキッチンクロックをデザインした
現在、ユンハンスで展開されている“マックス・ビル バイ ユンハンス”は、彼が1961年にデザインした腕時計を忠実に再現したコレクションであることはよく知られている。実はこの腕時計にはデザインの原型となったものがあった。それがユンハンスとマックス・ビルの初のコラボレーション作となったキッチンクロック(56年)である。
1956年に発表されたキッチンクロック
そんな歴史的な名品を忠実に再現した復刻版が発表された。本作ではデザインはもとより、サイズやフォルム、そして素材までオリジナルと同じだというから力が入っている。エナメル加工されたセラミックケースと文字盤は、ドイツの工房で一つひとつ手作業で仕上げられたものだ。65年以上経ったいまも美しさと明快さを失わない、完成されたデザインを生み出したマックス・ビルの類い希なる才能を改めて感じさせる。
マックス・ビル キッチンクロック
ユンハンス社からの依頼でマックス・ビルがデザインを手掛けた1956年発表のキッチンクロックを忠実に再現。時計部分はクォーツ式(オリジナルは機械式)、最大60分のタイマーは機械式のムーヴメントを採用する。 ■Ref.362/1100.00。セラミックケース。ケースサイズ180mm×252mm。非防水。クォーツ(Cal.J738/※タイマー部は機械式)。7万8100円
【問い合わせ先】
ユーロパッション TEL.03-5295-0411
http://www.europassion.co.jp/junghans/
文◎堀内大輔(編集部)