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約70年の時を経てデイトナ専用に自社開発された初の自動巻きクロノムーヴメントは何が凄いのか?|ロレックス通信 No.159

このCal.4130について、アンティークから現行モデルまでロレックスに精通する修理技術者、クロノドクターの久保氏に話を聞いた。

 ポイントは大きく二つあると言う。久保氏は「とにかくメンテナンスがしやすいですね」と合理的な設計をそのひとつに挙げる。クロノグラフ機構とゼンマイの巻き上げ機構を裏ブタ側に一元化、メンテナンスの際に日の裏側(文字盤側)のパーツまで外すこともなくなり作業性が格段に向上した。

 また、クロノグラフ機構の歯車を水平に輪列したカップリング(水平クラッチ式)から縦方向に水直輪列させた垂直クラッチ式に変更した点もポイントだと言う。「カップリングは耐久性に優れますが、クロノグラフのスタート時に針飛びしやすい。その点で垂直クラッチになってかなりスムーズなスタートになりました」。加えて、U字形(写真赤丸印)のリセットハンマーひとつで、クロノグラフ針、30分と12時間積算針の三つをいっきに帰針させるという合理的かつコンパクトな設計を実現したことも大きいと語る。

ニオブとジルコニウムを含んだ常磁性の合金によって自社製造されたパラクロム・ヒゲゼンマイが採用されている点が最大の特徴。外部から磁力の影響を受けず、標準の10倍もの耐衝撃性に加えて温度変化にも強いと言われるハイテク素材だ。2008年ごろからは写真右のようなブルーのパラクロム・ヒゲゼンマイに変更された

 また精度面に対する強化も特筆すべき点だ。まず、テンプを支えているブリッジを両側から支えるダブルブリッジ式に変更。堅牢性はもちろん安定度も格段に高められている。しかも、そのヒゲゼンマイには、耐磁性が高く温度変化にも強い独自開発のパラクロム・ヒゲゼンマイがほかのモデルに先駆けて採用されている。まさに最新技術の粋を集めて完成させた高性能キャリバーなのである。

 このように高精度だけでなく、メンテナンス性、操作性への配慮も決して怠らない。実用性を重んじるロレックスらしさが随所にみられるまさにそんな作りなのだ。完成から今年ですでに22年。この間ずっとデイトナに採用され続けていることからもその完成度の高さがうかがえるに違いない。

[SPEC]
振動数:毎時2万8800振動
石数:44石
パワーリザーブ:通常時72時間、クロノグラフ作動時約66時間
クロノグラフの伝達方法:垂直クラッチ式
クロノグラフの作動方法:コラムホイール

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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