6月5日に書いたNo.149「デイトナ初の自動巻きムーヴメントに、ロレックスが施した意外な改良とは!?」では、2世代前のRef.16520に採用されたゼニス社の自動巻きクロノグラフムーヴメント、エル・プリメロベースのCal.4030を取り上げて多くの反響をいただいた。今回はその後継として2000年登場のひとつ前の旧デイトナ(Ref.116520)から現在も使われているCal.4130について書きたいと思う。
Cal.4130は、デイトナ専用としてロレックスが自社開発した実は初の自動巻きクロノグラフムーヴメントなのである。ロレックスといえば、1931年に360度全回転式ローターを採用した自動巻きムーヴメントを世界に先駆けて開発した、いわば自動巻きムーヴメントのパイオニアである。
自社製の自動巻きクロノグラフムーヴメント、Cal.4130を搭載する旧型のRef.116520(左)と現行のRef.116500LN
そんなロレックスがクロノグラフ機構を持つ自動巻きムーヴメントを自ら開発したのは、最初に自動巻きムーヴメントを完成させてから実に69年後のことだった。世の中に自動巻きのクロノグラフムーヴメントが初めて出現するのは、ゼニスのエル・プリメロことCal.3019PHC、ブライトリング、ホイヤー・レオニダス、ハミルトンらで共同開発したCal.11、加えて日本のセイコーのCal.6139と、3種類の自動巻きクロノグラフムーヴメントが誕生した1969年のことである。当然ロレックスもずっと開発は進めていたはずだ。ただそこは完璧さを目指すロレックス。既存の自動巻きムーヴメントのさらなるブラッシュアップを優先した、あるいは自動巻ムーヴメントのパイオニアとして、世に出せるまでの完成度には至らなかったということもあるのかもしれない。
そのためロレックス唯一のクロノグラフウオッチとして63年に登場したデイトナは、まずクロノグラフの名門バルジュー社の手巻き式クロノグラフムーヴメント、キャリバー72系を採用した。そして88年に初めてゼニス社のエル・プリメロという自動巻きクロノグラフムーヴメントを採用する。これまでクロノグラフの名機と言われる他社製ムーヴメントをベースに、独自に改良を加えてきたのだ。つまり4130は、それらをとおして長年研究を積み重ねてきたロレックスが、そのノウハウをもとに満を持して完成させた集大成だったと言える。
ローターに隠れてわかりづらいが、6時位置方向中央に設けられたリセットハンマーがこれだ(赤丸印)。両側からツノのように突き出たU字形をしておりクロノグラフ針、30分積算計、12時間積算計の各歯車に付いたハートカムをいっぺんに叩いて計測針をゼロリセットする
『クロノドクターの久保氏に話を聞いた。Cal.4130の凄さとは?』