二人の時計好きが立ち上げたという新興のジャパンブランド“カル・レイモン”。その最初のコレクション“クラシック パイオニア”が、クラウドファンディングのマクアケでいきなり約1200万円もの資金を集めて注目された。そして何より筆者が驚いたのは、金額の大きさもさることながらその時計のデザインだった。
それはクロノグラフでもなくダイバーズウオッチでもない。何とクラシカルなドレス系ウオッチだったのだ。しかもそれは三つのインダイアルに日付け、曜日、月を表示。加えて6時位置にムーンフェイズ(月齢表示)が付いた、かなり古典的なスタイル。いわゆる高級時計でいうところのトリカレムーン(トリプルカレンダー・ムーンフェイズの略)である。つまり、低価格の腕時計市場でこういったニーズがあったことに、長年時計に携わってきた身としては恥ずかしながら驚かされたというわけである。
クラウドファンディングで約2400万円もの支援を集めたカル・レイモンのマジェスティ
そんなカル・レイモンの新作“マジェスティ”がまたもやマクアケで約2400万円という驚異的な数字を残したということで、それがどんなモデルなのか今回実機を見させてもらった。
このマジェスティ。先述したクラシック パイオニアと同じトリカレムーンモデルである。最大の特徴は高級腕時計において2019年ごろから人気のスタイルとして急浮上した、通称ラグスポ(ラグジュアリースポーツの略)風に仕上げられている点だ。最近、低価格帯の時計にも、この流れがきている。
ラグスポとは、オーデマ ピゲのロイヤル オークやパテック フィリップのノーチラスに代表されるスタイルで、見た目でおおざっぱに表現するとラグを持たないケースとブレスレットが一体型の構造を持ち、それでいて薄型でクラシックな70年代っぽいスタイルのことを言う。
ラグがなくケースとブレスが一体型のため手首が細い筆者でもケースとブレスの接続部分に手首との隙間ができることなくフィット感はいい。
さて、実機を見てまず思ったことは、トリカレムーンでしかもブレスモデルというのは、4万円台という価格帯にはおそらくこれまではなかったと思う(あったらごめんなさい)。その意味では新鮮に感じる。しかも高温多湿な日本のいまの時期に、ビジネスでも付けられるこういったクラシカルなブレスモデルはありがたいのではないか。
見た目に文字盤は単調なラウンドではなく、ほどよいクッション形にするなど変化があって全体の雰囲気もいい。ただこれはあくまでも筆者の私見でどうでもいいことかもしれないが、ラウンドではなく八角形にしたミドルケースのエッジ部分をもう少し仕上げに変化があってもよかったかなと思ったりもした。ただ4万円台という価格を思えば、全体としてはかなりよく仕上げられていると思う。
写真を撮るのを忘れたが、マジェスティにはもうひとつ特筆すべき点がある。それはブレスレットを装着するケース側部分に二つのピンレバーが装着されており、それを内側にスライドするだけでブレスレットが簡単に外れ、専用のラバーベルトに工具なしで交換できるというインターチェンジャブル機構を設けていることだ。
近年、カルティエ、ルイ・ヴィトン、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲなどの名だたる高級ブランドが採用するこの機構。メーカー純正品しか付けられないというデメリットもあるが、この価格帯で取り入れているとはちょっと驚きである。
マジェスティは3時位置に月、9時位置に曜日、12時位置に日付け、そして6時位置にムーンフェイズ(月齢表示)を備えた多機能時計だ
素材:ステンレススチールケース
サイズ:ケース径40mm、厚さ10mm、重さ161g
機械:クォーツ(Cal.Miyota 6P 00)
防水: 5気圧(50m防水相当)
価格:4万9500円
撮影◎笠井修/協力◎タイムギア・オンラインショップ