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【アンティーク時計】1950年代に流行した、複雑カレンダームーヴメント4選

 腕時計が普及した1940年代以降になると、日常に役立つ付加機能が徐々に求められるようになった。その最たるものがカレンダー機能である。一般的なデイト表示だけでなく、月・曜日表示、さらにはムーンフェイズ表示まで備えたセミコンプリケーション・ムーヴメント(機構自体は古くからあった)が開発されるようになる。その後、50年代になると、複雑カレンダーモデルは時代を象徴するデザインとして人気を博したのである。
 もっとも、その開発は容易ではなかったため、製造できたのは限られたメーカーだけである。当時複雑カレンダーモデルを展開していたのは、雲上系ブランドに加えてジャガー・ルクルトやモバード、フェルサ、ユニバーサル、バルジュー、オメガなどが挙げられる。加えてこうした複雑カレンダーモデルが流行したのは、40年代〜60年代にかけてであったため、タマ数はそれほど多くない。
 高い実用性を有する反面、機構の複雑さゆえに故障のリスクも少なくないなど、正直ビギナー向けとは言い難いのだが、アンティークを代表する人気ジャンルのひとつであり、デザインも魅力的なものが多いため、今回取り上げさせていただいた。最初の1本で無理に狙わず、アンティークウオッチに多少慣れてから購入することをおすすめする。

 

ジャガー・ルクルト[Cal.484/1AW]

手巻きの449をベースとして、カレンダー機構を追加したのが484/1AWである。特に優れていたのは月自動送り装置を備えていた点だ。なおムーンフェイズ付きの494/AWは製造数が少なく、希少性が高い

 

モバード[Cal.473]

カレンダーウオッチの分野でいち早く存在感を示したブランドのひとつがモバードだ。フルカレンダー・ムーンの473を搭載するセレクトグラフは、同社カレンダーウオッチの最高峰に位置付けられる

 

オメガ[Cal.381]

オメガ100周年を記念したコスミックに搭載されたフルカレンダー・ムーン付きムーヴメント。当時のオメガは、このようなコンプリケーションをほとんど製造していなかったため、コレクターズアイテムとしても人気だ

 

ユニバーサル・ジュネーブ[Cal.281]

クロノグラフムーヴメントにフルカレンダー・ムーンを追加したセミコンプリ。トリコンパックスが有名だ。なお同社はフルカレンダーのみのCal.291も展開しており、こちらのほうが予算的なハードルはぐっと下がる

 

 それぞれ相場は安くないものの、信頼性の高い4種をセレクトしている。なかでもおすすめは484/1AWである。

ジャガー・ルクルトは優れたムーヴメントメーカーとしても知られている。シンプルな3針はもとより複雑機構の開発にも長けており、複雑カレンダーも484/1AW以外に複数手掛けていた。こうした実績を踏まえても安心感は高いと言えるだろう

 このムーヴメントのベースとなっている449は、有名なジオフィジックなどにも搭載され、手巻きの傑作としても知られるキャリバーだ。また当時の一般的なフルカレンダー機能では、月表示を手動で切り替える必要があったのに対し、484/1AWでは自動送り装置を備えていた。基本性能の高さに加えて、実用性という点でも優れていたのである。なお484/1AW搭載モデルでも個体によって価格に開きがある。これはムーヴメントを含むコンディションに依るところが大きい。相場よりもあまりにも安く設定されている場合は、外装のチェックはもちろん、カレンダー機能が正常に動作するかどうかの確認は必須だ。
 また今回取り上げた以外の複雑カレンダーモデルもいくつかあり、なかには30万円台と安価な相場で流通している個体もある。ただし、こうしたモデルの多くは廉価版のエボーシュを搭載している。ここで取り上げたムーヴメントに比べて、故障のリスクがやや高くなるため注意が必要である。

 

文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修

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