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【アンティーク時計】ビギナーにおすすめな傑作「自動巻きムーヴメント」4選

 機械式時計の“自動巻き機構”は、比較的新しいものだ。世界初の自動巻き腕時計とされるのは、1922年にル・ロワが製作したものであるし、そこから一般に普及するまでにも長い年月を要した。
 なぜなら当初、自動巻き機構の有用性に懐疑的だった時計メーカーが多く、またそのメカニズムを確立することも容易ではなかったためである。そんななかこの分野にいち早く目をつけ、大成功を収めたのがロレックスである。その後、オメガやロンジン、ジャガー・ルクルトなどは40年代、パテック フィリップは50年代に入ってからようやく初の自動巻きムーヴメントを完成させている。
 もっとも、1920〜40年代にかけて製造された自動巻きムーヴメントは、いわゆる黎明期であり、実用として十分と言えるものは多くなかった。この時代の自動巻きムーヴメントはマイルストーンとしての魅力や面白みもあるのだが、不具合も少なくないのである。
 実用できるアンティークを探すのであれば、試行錯誤の末、完成形へと近づいた50年代以降の自動巻きムーヴメントを搭載したモデルをセレクトしたい。

 

オメガ[Cal.550系]

ハーフローター式から始まったオメガ自動巻きの完成形で、全回転両方向巻き上げを採用する。手巻きの30系同様、優れた精度がもち味であり、クロノメーター仕様も数多く製造された

 

IWC[Cal.85系]

重厚な設計をもつ自動巻きムーヴメントの傑作機。最初の85から、改良を加えた発展形として852系、853系、854系と続く。最大の特徴はラチェット式の巻き上げシステムで、優れた巻き上げ効率と信頼性を備える

 

ロレックス[Cal.1500系]

アンティーク自動巻きの完成形とまで評されるロレックスの1500系。フリースプラング式を採用するなど優秀な精度を誇る一方、スポーツモデルにも搭載できるタフさをあわせもつ

 

セイコー[Cal.61系]

独自のマジックレバー式によって実現した優れた巻き上げ効率と、毎時3万6000振動による高い精度を両立したセイコーの傑作自動巻き。高振動にもかかわらず、耐久性にも優れていたため、いまもって実用できる個体は多い

 

 四つはいずれも高い精度と信頼性、そして優れた巻き上げ効率を誇る傑作と言え、実力は伯仲しているが、信頼性という観点から見ると、IWCの85系、通称“ペラトン自動巻き”が一歩抜きん出ているだろう。

 このペラトン自動巻きでは、巻き上げ方式にロレックスなどが用いた歯車で噛み合うリバーサー式ではなく、爪の左右運動によって主ゼンマイを巻き上げるというラチェット式を採用した。メリットは、少ない巻き上げ角度でもゼンマイが巻き上がる点。そして理論上、パーツの摩耗も少なかった。リバーサー式の自動巻きでは、しばしば摩耗による巻き上げ不良が起こるが、85系においてはそういったトラブルは少ない。外装の程度が多少悪くとも、整備さえすればきちんと動く個体が多いのだ。そしてIWCはこの85系を当時、様々なモデルに搭載したため、選択肢が豊富で価格も手頃という点も魅力である。
 なお自動巻きにいち早く着目し、大成功を収めたロレックスの1500系はリバーサー式だが、歯車に特殊なコーティングを施し摩耗を低減させているなどの対策が取られ、非常に優秀なムーヴメントであるが、その搭載モデルの価格は安くないというのがネックだ。

 

文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修

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