パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターなどと並び、時計好き憧れの機構として知られているトゥールビヨン。時計師アブラアム=ルイ・ブレゲが200年以上前に発明した複雑機構であり、脱進機と調速機をキャリッジの中にまとめて回転させ、姿勢差を平均化する独自の機構が最大の特徴だ。
小さなパーツを高い加工精度で製造し、それを組み上げて調整するためトゥールビヨンの製作には熟練の技術とコストが必要となる。そのため一般的に高額となるのだが、近年はその常識に変化が生じている。製造技術の進歩により、手頃な価格帯でトゥールビヨンを展開するブランドが登場しているのだ。今回紹介する“ヴァルドホフ”もそのひとつだ。
【今回の実機レビューモデル】
WALDHOFF(ヴァルドホフ)
ザ・インペリアル
ザ・インペリアル”は17世紀から18世紀にかけてヨーロッパで流行したバロック様式からインスピレーションを得た代表モデル。バロック様式の象徴的なモチーフのひとつであるアカンサス(葉あざみ)の装飾を文字盤と裏面に採用。立体的な装飾とトゥールビヨンが、独特の奥行き感とドイツブランドらしい高級感を醸し出している。
■素材:316Lステンレススチールケース(サファイアクリスタル風防)、レザーベルト
■サイズ:ケースサイズ43mm(ラグ上限幅49mm)、厚さ13mm
■防水性:3気圧防水
■ムーヴメント:手巻き(Cal.Hangzhou3452)
■搭載機能:時刻表示/トゥールビヨン
■価格:28万7000円
【ヴァルドホフのブランド紹介】
ストーヴァで時計師として働いていた経歴をもつマンフレッド・スタルクが2015年にドイツのフォルツハイムで創設。手頃な価格帯のトゥールビヨンを主軸にラインナップを展開し、ドイツ、シンガポール、香港にオフィスを構えて時計を製造。海外のサプライヤーから外装パーツやムーヴメントの供給を受けているが、ドイツで企画立案、組み立て、品質管理を実施することで、同価格帯の安価なトゥールビヨンに比べて品質の高いモデルを製造している。
》文字盤について
曲線を多用したアカンサス(葉あざみ)の装飾のクラシックな意匠と、微細なパーツで構成されたトゥールビヨン、立体感のある造形の組み合わせが文字盤に建築物のような奥行き感を加えている。
模様を透かして見える機械式ムーヴメントと、6時位置に配されたトゥールビヨン、機械式時計ならではのメカニカルな機能美を生み出している。
手頃な価格帯の機械式時計は42時間前後のパワーリザーブ(最大巻き上げ時の駆動時間)が主流だが、このモデルでは、動力となるゼンマイを納めた香箱を二つ搭載した“ツインバレル”仕様にすることで、約80時間のロングパワーリザーブを実現。ゼンマイを納めた香箱は裏面にもスケルトン加工を施しており、アカンサス(葉あざみ)の装飾を通して、裏面からもトゥールビヨン搭載ムーヴメントを鑑賞することができる。
》外装について
フレーム構造のステンレススチールケースでサファイアガラスのミドルケースを挟み込んだ独創的なデザインを採用。ミドルケースはスイスで製造されており、クリアな質感と立体的なフォルムがサイドからの美観を際立たせている。
【装着感について】
ラグを含まないケースの直径は43mm、ラグの上下幅が約49mm、厚さは約13mm。アカンサスをモチーフにした装飾パーツ配置したを文字盤、ムーヴメントをサイドから鑑賞できるようにスペースを確保したサファイアガラス製のミドルケースを採用しているため分厚く、大きめのサイズ感となっている。
存在感のある大きめのデザインだが、ラグを短めの造形に仕上げ、手首にむけて角度を付けているため装着感は見た目よりも良好だ。ラグ幅を22mmに設定している点も、安定感とホールド感を高める効果を発揮している。
このモデルは、Dバックルを採用している点もポイントのひとつ。いちど突棒の位置を決めておけば一般的なバックルのようにベルトに負荷をかけることが少ないためベルトを痛めにくく、着脱が簡単なのも魅力だ。
【総評】
ヴァルドホフは時計の修理に関して国内屈指の規模と実績を共栄産業と提携することで日本国内でのメンテナンス体制を確保している点も特徴のひとつ。ドイツの工場で品質管理を実施しているため、ほかの安価なトゥールビヨンに比べると質感も良い。20万円台後半という価格は一般的な感覚としては決して安い価格ではないが、この価格帯でトゥールビヨンの造形と動きを楽しめるのは魅力と言えるだろう。
【問い合わせ先】
トライディア
MAIL:info@tridia.co.jp(※問い合わせはメールにて対応)
【先行予約販売サイト:タイムギアオンラインショップ】
https://timegear-onlineshop.com
※2022年4月28日(木)の18時より、期間限定で先行予約を開始予定。納期は8月中旬を予定
文◎堀内大輔(編集部)