去る3月30日にロレックスの2022年新作モデルが公開された。当ウオッチライフニュースでも速報として、同日に取り上げているためご存じの方も多いかもしれないが、去就が注目されていたエアキングとミルガウスについては、結果的にはモデルチェンジされたのはエアキングだけで、ミルガウスは現状のまま販売が継続されるという意外なものだった。
ではこの結果を受けて並行輸入での両者の実勢価格相場はどのように動いたのかを見てみると、先週の金曜日(3月25日)に比べて直近4月1日の定点チェックでは、ミルガウスで6万円、エアキングで2万円の上昇と両者とも極端な動きにはなっていない。特にエアキングに至っては、今回モデルチェンジが明らかになったわけで、これまでのロレックスの流れだと旧型は今後買えなくなるため急激に上昇しても良さそうなものだ。しかしそれをまったく感じさせない意外な動きとなった。ただし今後どうなるかは、いまのロレックス市場を考えると正直わからない。
【写真】旧型エアキングとミルガウスの価格推移をグラフでチェック
さて、今回発表された新生エアキングについても少し触れておきたい。パッと見はあまり変わっていないように見えるが、実は単なる新型ムーヴメントへの移行だけではないようだ。公式資料によると違いについて大きく以下の三つが挙げられている。
右が旧型のRef.116900、左が新型のRef.126900
<ケース&ブレス>
ケースサイトが直線的になり、以前は無かったリューズガードが付いた新ケースが採用されている。加えてブレスレットのセンターリンクの幅も広がったことでバランスが良くなったと書かれているが、これについては旧型の写真と見比べたがちょっとわからなかった。
<インデックス>
ミニッツスケールの最初の5を“05”に変更。すべてのアラビアインデックスを2桁として視認性を高めている。また三角のアワーマーカーに加えて3・6・9も夜光となり暗所での視認性を向上。特に12時位置の三角は新しい発光素材を使用し、より長く光るようになっているらしい。
<ムーヴメント>
新たに70時間パワーリザーブのCal.3230が搭載された。実はこれサブマリーナー、Ref.124060と同じカレンダー機能を持たないムーヴメントなのだ。ここでひとつ疑問に思うのが、旧型には耐磁時計であるミルガウス用に作られたCal.3131と同じものが採用されていたため、ムーヴメント自体も耐磁仕様だった。そのため流れからすると3230ではなく3231というキャリバー番号になりそうなものだが、今回搭載されたのは通常の3230と、耐磁仕様ではなくなったということになる。そうなると当然耐磁シールドも無くなった(現に資料にも記載がない)わけだからケースの厚みも薄くなって着けやすくなったということは言えるのかもしれない。
2021年5月30日の当連載No.096でも「ご存じですか。ミルガウスとエアキングの微妙な関係」と題して両者を取り上げている。そこではエアキングの耐磁シールドの写真も載せておりミルガウスと同じであることがわかる。にもかかわらずロレックスは、旧型エアキングの耐磁性能については、商品情報のなかに「ムーヴメントを保護する耐磁シールド」という記述だけで、ミルガウスのような耐磁仕様だということを公式には明示してこなかった。これについてはミルガウスとの差別化ができなくなるからなのではないかと言われてきた。その意味では、今回通常のムーヴメントに置き換えられたということでポジショニングも明確になったということなのだろう。
これはあくまで筆者の予測にすぎないが、だとすればミルガウスは来年以降しっかりとモデルチェンジが実施されるような気がする。なぜかというと現在オメガにはミルガウスの15倍の1万5000ガウスの耐磁能力をもつ耐磁時計がある。そのためミルガウスは性能的にみるといまではかなり劣るからだ。
かつてシードゥエラーが防水能力で他社に先を越され、ロレックスは後に他者を圧倒する驚異的な防水能力のダイバーズウオッチ、ディープシーを商品化している。このようにミルガウスをロレックスを代表する最強の耐磁時計として再び商品化することは、実用時計として常に最先端を追い求めてきたロレックス にとっては、ある意味自然な流れのような気がする。