ロンジンは1832年、オーギュスト・アガシによってスイス・サンティミエに設立された時計会社に端を発する。50年代半にアガシの甥であるアーネスト・フランシロンへと事業が引き継がれるが、彼は製品の標準化と合理化を推進した人物で、近代的な設備を備えた自社工場を67年に開設。自社でムーヴメント製作を手がけ、製品に“ロンジン”の名を使いはじめたのはこの頃からだ。
こと、ロンジンは時計愛好家から非常に高い評価を得ている。特に1920年代後半から40年代の手巻きムーヴメントは優れた耐久性と美観を併せ持つことからファンも多い。人気の花形といえばCal.13ZNや30CH搭載のクロノグラフだろう。前者は腕時計初のフライバッククロノグラフという時計史におけるマイルストーン的価値はもちろん、頑強に作られ、精巧に組み上げられた機械としての造形美が多くの愛好家を魅了している。また、クロノグラフの人気に隠れがちだが、Cal.12.68を筆頭にシンプルな手巻きの3針にも実力機が多い。部品の作りはクロノグラフ同様、しっかりと作り込まれており、優れた耐久性を実現。各国の軍用時計に採用されていたことからも、その信頼性の高さがうかがい知れる。
数多くの名機を輩出したロンジンだが、自動巻きの開発では他社の後塵を拝した。同社初の自動巻きとして、1945年にリリースされたのがラチェット式を持つ重厚な自動巻きのCal.22ASだ。全回転ローターに両方向巻き上げ式の優秀なムーヴメントだったが、一説ではコストがかかりすぎたため、52年に後継機のCal.19ASに切り替わったとされる。
そしてこの19ASを搭載して54年に登場するのが、コンクエストだ。従来の自動巻きムーヴメントより小型になった19ASを採用することで防水ケースへの搭載が可能となり、エレガントなデザインながらも防水、耐震、耐磁性能を備えた優れた自動巻きモデルのひとつとなった。ケースは金無垢仕様とステンレススチール仕様を展開。56年にはデイト表示付きモデルなども登場し、バリエーションを拡充した。
同時代に生まれたオメガのコンステレーションに対抗して、ロンジンが1954年に発表した自動巻きモデルのコンクエスト。“すべての品質でファーストクラスを保証する”というコンセプトで、防水、耐震、耐磁性能も備えた高級ドレスウオッチとして積極的にアピールされた
また当時のロンジンの最上位機種に位置付けられ、金無垢仕様の裏ブタにはエナメルによる海と星空のモチーフがあしらわれるなど、外装の作りも凝ったものであった。その後、58年には、リバーサー式の自動巻きのCal.290が開発され、これを搭載する第2世代コンクェストが登場する。
コンクエストに搭載されたムーヴメントはロンジン初の自動巻きCal.22ASを改良版となる19ASである。デイト表示付きも展開されており、これは19ASD(もしくは19AD)となる
文◎堀内大輔(編集部)