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【時計界の超名門が放つ傑作】個性際立つヒストリーク・アメリカン1921を実機レビュー

 ヴァシュロン・コンスタンタンの評価は2022年に確実にアップするだろう。日本では知る人ぞ知るブランドだが、265年以上の歴史を有している名門ウォッチメゾンである。だがその歴史の長さに甘んじることなく、常に革新を続けるヴァシュロン・コンスタンタンのコレクションはどれも飽きがこないオトナの雰囲気で、作りの良さは文句なしの最高峰レベルでもある。一部のモデルは入手困難だが、狙うならまさにいまが絶好のタイミングであろう。ただ、年間の製造本数が多いわけではないため、そのうち買いたくても買えないブランドになってしまう可能性大だ。

 旅のスピリットを見事に表現しているオーヴァーシーズ コレクションが人気だが、過去の豊富な名作アーカイブを現代的に表現しているヒストリークコレクションも、このブランドの魅力を堪能するにはうってつけだろう。今回そのなかから昨年100周年を記念して発表された“ヒストリーク・アメリカン 1921”をピックアップしたい。

ヒストリーク・アメリカン1921
■Ref.82035/000G-B735。K18WG(40mmサイズ/8.06mm厚)。3気圧防水。手巻き(Cal.4400 AS)。435万6000円

 このモデル、名前が示すようにいまから100年以上前、1920年代初頭にアメリカ市場向けに開発されたモデルだ。特徴的なのは右に45度傾いたダイアルで、これは車を運転しているときも見やすいようにデザインされたものだとされてきた。確かに20年代はアメリカのモータリゼーション全盛期と重なるが、近年は異論が出てきており、必ずしもドライバーズウオッチとして開発されたわけではないようだ。アメリカの作家で牧師のサミュエル・パークス・キャッドマンが愛用していたことからも想像がつくように、ヴァシュロン・コンスタンタンとしては、かなり実用性を押し出したモデルとして生まれたのだろう。

 ケースフォルムはクラシカルな40mmサイズのクッションケースで、ダイアルにはレールウエイトラックとブレゲインデックスがペイントされており、美しい光沢のグレイン仕上げが施されている。このペイントの精度が素晴らしく一見の価値ありだ。3時位置のスモールセコンドもいい雰囲気で、シンプルだがオールドアメリカンな雰囲気を伝えてくれる。ブレゲ針とバトン針の組み合わせも楽しい。
 ケース素材はホワイトゴールドで存在感はあるが、落ち着いたトーンでつけやすい。ゴールドケースを採用しながら87.82gとあまり重くないのだが、これは薄型の手巻きムーヴメントを搭載し、全体の厚みが8.06mmに抑えられていることも大きい。ケースエッジも立ちすぎておらず、薄さも相まってスーツ着用時などに袖周りの鬱陶しさを感じることもないだろう。

 搭載ムーヴメントは自社開発の手巻き4400 ASで、2.8mmという薄さが持ち味。この薄さが時計全体のスマートさに貢献している。しかも香箱を可能な限り最大限化したことで、65時間というパワーリザーブ性能を有している。精度についてもほかのムーヴメントと同様にジュネーブ・シール認証を受けており、そのクオリティは折り紙付きだ。細かい面取りやコート・ド・ジュネーブの美しさもハイレベルで、これだけ見た目の美しい機械だとシースルーバックも生きてくる。

 上質なカーフストラップも装着感は上々で、トータルに見ていくと欠点はほぼ見当たらない。あとは400万円台という価格をどう捉えるかだが、個人的にはこれは決して高くないと思う。特にある程度の社会的ステータスを得た40~50歳代であれば、クルマ1台分のコストを時計にかけてみてもいいはずだ。ヴァシュロン・コンスタンタンにはそれに見合う価値がある。アメリカントラッドのスーツに合わせるにはこれ以上ないほどぴったりな時計だし、残りの人生を共に歩んでいくにはふさわしい相棒となってくれるだろう。

 

【問い合わせ先】
ヴァシュロン・コンスタンタン TEL:0120-63-1755
https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/home.html

 

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修

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