近年は限定モデルも多くリリースされているオメガのスピードマスター。限定ということですぐに売り切れとなり、人気モデルはなかなか手に入らないことも多いのだが、今回紹介するクロノスコープはひさびさのレギュラーコレクションの新モデルだ。つまりオーダーを入れれば確実に手に入るということで(当面は需要が供給を上回るだろうから、しばらく待たされるかもしれないが)、スピマスファンにはかなりうれしいリリースなのではないだろうか。2021年初頭にはスピードマスター プロフェッショナルがマスタークロノメーター搭載機にリニューアルされたこともあり、オメガでは基幹ラインのスピードマスターを再編する意図があるのかもしれない。
スピードマスター クロノスコープ
■Ref.329.30.43.51.02.001。SS(43mm径/12.8mm厚)。5気圧防水。手巻き(Cal.9908)。102万3000円
まずパッと見た印象は、スピードマスター プロフェッショナルとはかなり雰囲気が異なるということ。ケースのフォルム自体は現行ムーンウオッチにかなり近いのだが、ダイアルデザインはまったく異質だ。インダイアルは12時間積算計と60分積算計の2カウンター仕様になっており、インデックスはアラビア数字。しかも通常のベゼルに配されたタキメーターだけでなく、ダイアルにテレメーター(距離計測)とパルスメーター(心拍計測)が付加されているので、盤面表示はかなり細かい。
2カウンターということもあり、スタイリングは1940年代の古典的なクロノグラフ風だが、アルミ製タキメーターベゼルやカラーリングの発色の良さなどに現代的なエッセンスを感じさせる。今回チェックしたのは白文字盤にブルーインデックスのタイプ。このほかに白文字盤×黒・赤インデックス、ブルー文字盤×白インデックスなどのバリエーションがあり、さらにブロンズゴールドケースの豪華版もラインナップされている。白とブルーのコンビネーションはスポーティブで夏用の時計に良さげな色味だが、テレメーターやパルスメーターを備えた渋いデザインを合わせたことで、かなり個性的な雰囲気になっている。ダイアルには円周上のスネイルパターンが入っており、そこにテレメーターとパルスメーターが載っている独創的なデザインが個性をグッと引き立てている。さらにインダイアルにはしっかりと段差が入っていて文字盤には立体感があり、ダイアルのデザインに合わせた長めのリーフ針もアンティークな雰囲気を高めている。
全体に古典と現代をいいバランスでフュージョンさせたデザインと言えるが、細部の仕上げはオメガだけに抜かりがない。特にダイアルの細かい印字表記の美しさは素晴らしい。ブルーのトーンも上品でアクセントとしてよく効いている。
ケース径は43mmで、ムーンウオッチの新モデルよりも1mm大きいのだが、それほど大きすぎるとは感じさせない。ケース厚は12.8mmとクロノグラフとしてはかなりスマートで、装着感はかなり良い。この着用感には3連ブレスも一役買っているだろう。現行ムーンウオッチにも採用されているタイプで、細身で腕にもよくなじみ使いやすい。バックル部分は5mmの微調整ができるため、厚着の季節になったら少し緩めたりと自由度の高い使い方ができる。
搭載ムーヴメントはマスタークロノメーター認証の手巻きCal.9908。クロノメーターの一段上を行く精度の高さ、シリコン製ヒゲゼンマイによる優れた耐磁性、メンテナンス性の高さなどでオメガが推している高性能な機械だ。シースルーバックからはアラベスク模様のコート・ド・ジュネーブ装飾が施された3/4プレートがのぞけて迫力満点だ。
レーシングウオッチ風の白文字盤×黒・赤インデックスもいいが、やはり一押しは白文字盤×ブルーインデックスのモデルだろう。爽やかなスタイリングで嫌味なく使いこなせそうだ。またオメガ独自の合金であるブロンズゴールドモデルも、使っていくうちに渋みが出てきそうで面白いのではないだろうか。ムーンウオッチと比較するとやや価格帯はアップするが、ディテールのクオリティもそれだけ向上していることを考えると妥当な線だと思う。当面は入手も困難だと思われるが、クロノグラフを物色しているならチェックしておく価値はある時計だ。
【問い合わせ先】
オメガお客様センター TEL.03-5952-4400
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構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修