高い防水性を備えた本格的なダイバーズウオッチが登場したのは1950年代。多くの人がご存じのロレックスが発表したサブマリーナー(53年)がその最初と言われている。その後、いくつかの時計メーカーが本格的なダイバーズウオッチを発表していることはしていたのだが、その数は多くなかった。なぜなら開発には非常に高い技術力を要したためだ。
しかし、その後の60年代から70年代にかけて、ダイバーズウオッチは急激に数を増やし、“最盛期”と言われるほどに市場が拡大している。技術が進化したということも理由としてあるのだが、実はこの背景にはあるケースメーカーの存在が大きく関係しているとも言われる。
そのケースメーカーというのが、スイスのERVIN PIQUEREZ S.A.(以下EPSA社)である。
同社は50年年代半ばに画期的な構造で高い気密性を実現したコンプレッサーケースの特許を取得。そして同社はこのケースを様々な時計メーカーに供給したのである。これにより、様々なブランドからダイバーズウオッチが発表されたというわけである。このなかにはIWCやロンジンといった有名ブランドから、エニカやオルマといったマイナーブランドまである。
EPSA製ケースを採用したブランド(一部)
アルピナ/ベイラー/ベンラス/ブランパン/ブヘラ/ブローバ/ドロー/エドックス/エニカ/フォルティス/ジラール・ペルゴ/グライシン/ハミルトン/IWC/ジャガー・ルクルト/ル・シェミナン/リップ/ロンジン/ニバダ/グレンヘン/オルマ/テクノス/ティソ/ユニバーサル ジュネーブ/ウィットナー/ゼニス…etc.
なおこのスーパーコンプレッサーケースは文字盤内に回転リングを備えており、その操作用と時刻調整用で二つのリューズを有していたため、ひと目でそれとわかるフォルムとなっている。探してみると、似たケースフォルムをもつダイバーズウオッチをかなりの数、見つけることができるはずだ。
EPSA社の潜水夫モチーフ。同社のケースにはこのモチーフが刻印されている
文◎堀内大輔(編集部)