世界で初めてのLEDデジタル時計として1970年に登場したパルサー。パルサーが登場したことで、それまで時計ブランドが共有して来た伝統的な腕時計のデザイン、機能に対する概念は一変し、数字をデジタル表示するという新しいデザインフォーマットが誕生したことは広く知られている。パルサー登場以降も針を使用したアナログ時計が主流であったのは同じではあるが、様々なブランドがデジタル表示のモデルを製作しているのだ。
》強烈な個性を放つデジタルウオッチ黄金期の名作
代表的なのが、ジラール・ペルゴ、ジャガー・ルクルト、ロンジンなどスイスの名門ブランドだろう。パルサーの後を追うように70年代の半ばからLEDデジタルウオッチの開発に着手し、ケースのフォルム、表示方法について、オリジナリティーを爆発させた力作を輩出している。
機械式腕時計のマニュファクチュールとして長い歴史と伝統をもつ時計ブランドまでが、それまでと異なる表示方法、システムを採用するきっかけを作ったことを考えると、パルサーが当時の腕時計業界に与えた影響の大きさがうかがえるだろう。
JAEGER LE COULTRE(ジャガー・ルクルト)
LED
ドレスウオッチのスタイルを取り入れたジャガー・ルクルトのLEDモデル。高品質なメッシュブレスレット、エレガントなオーバルケースなど、名門らしい作り込みが光る。宝飾時計にも引けを取らない徹底した作り込みと高度なクオリティはさすがだ。1970年代製。参考商品
GIRARD PERREGAUX(ジラール・ペルゴ)
カスケット・マクロロン
ディスプレイをケース下部のやや奥まった位置にレイアウトして光を遮ることで、日中でもLED表示の視認性を確保。ケース素材に当時の最先端素材であるマクロロンを採用しているのも特徴だ。手首の形状に沿うようにカーブを描いたケースはまさに唯一無二。独創的な意匠は現在でもまったく古さを感じさせない。1975年製。参考商品
時計界の新たなジャンルとして確固とした地位を築いたかに見えたLEDデジタルウオッチだが、その勢いは長く続くことはなかった。汎用モジュールが安価で流通したことによる価格の暴落や、消費電力が少ないLEDの登場により、その黄金期は70年代後半で終焉。わずかな期間ではあったことは事実だが、時計の歴史に大きな足跡を刻んだことも間違いない。
今回は、当時発売されたデジタルウオッチのデザインや雰囲気にインスパイアされたデジタルウオッチをクローズアップしてみた。現在ではガジェット感が強いデジタルウオッチだが、歴史的モデルをベースにしたモデルのレトロなデザインを見ると、そのDNAに時計史の1ページがしっかりと継承されていることが実感できるはずだ。
編集部の注目モデル_1
BREDA(ブレダ)
パルス コレクション
アメリカのディープエラムで2009年に創業した“BREDA(ブレダ)”。新作の“PULSE(パルス)”は、1970年代に流行したメカデジデザインのレトロアンティーク感を醸し出しつつ、ブランドらしい、ミニマルで洗練されたデザインを融合。時刻の読み方は、横に並んだ三つの小窓に現れる数字で、左から時間、分、日付けを示す仕掛けとなっている。
■(左)Ref.1745a。(中)Ref.1745b。(右)Ref.1745c。すべてSS(横26mmサイズ)。3気圧防水。クォーツ。各2万900円
【問い合わせ先】
マーサ インターナショナル
TEL.03-5541-0170
編集部の注目モデル_2
FUTURE FUNK(フューチャーファンク)
LED FF201
1970年代のLEDデジタルウオッチを模して製作されたフューチャーファンク最新モデル。当時流行したオーバルケースのデザインに加え、レトロなテイストを演出するべく、良い意味でのチープさを備えた赤いプラスチック風防、薄いメタルブレスなど、マニア心をくすぐるディテールを採用。デッドストックのデジタルウオッチを思わせる仕上がりとなっている。
■SS(43×38mmサイズ)。クォーツ(Cal.CR2032)。1万4850円
【問い合わせ先】
オ・ビジュー
TEL.03-6416-5272
編集部の注目モデル_3
YEMA(イエマ)
ディジディスク
1970年代ならではのユニークなデザインが目を引きつける機械式デジタル時計のリバイバルコレクション。時分針の代わりに回転するディスクを使用したデジタル表示に加え、ケースなどの外装まで当時のモデルを忠実に再現しつつ、日差+/- 10秒の自社開発自動巻きムーヴメント、10気圧防水のスペックと、現代のニーズを満たす実用性をしっかりと確保している。
■Ref.GB05325/01。SS(36 mmサイズ)。10気圧防水。自動巻き(自社開発キャリバーYEM A2000)。7万4800円
【問い合わせ先】
イエマジャパン
TEL:03-5875-8810
文◎船平卓馬(編集部)