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腕時計のケースやブレスレットに使用されている、定番素材であるステンレススチール。ステンレスとは錆び(=ステン)ない(=レス)という意味の名前のとおり、錆びに非常に強い特性を備えた鋼材。鉄を主成分とし、そこにクロム、ニッケルなどの物質を加えた合金である。
大まかにステンレススチールといっても、非磁性で加工性が高いオーステナイト系ステンレス、磁性があり食器類や台所用品などに使用されることが多いフェライト系ステンレスなどの種類がある。
なかでも、時計に使用されるオーステナイト系のステンレススチールには304L、316Lなどのさまざまなものがあり、種類によってはアレルギーが起きやすいものと、起こしにくいものがあるのだ。
そもそも金属アレルギーは、汗などで微量に溶け出した金属成分を体が異物と判断し、炎症などの症状を引き起こしてしまうということが多い。
そのため、酸に弱く汗で溶け出しやすいニッケルやクロムなどが配合されたステンレススチールは、アレルギーを誘発してしまう。
比較的安価な時計に使用されているのがSUS304。これより腐食に強く、耐久性を向上させたものがSUS316Lで、近年はどちらかというとSUS316Lが主流になってきている。
ただSUS316Lより腐食や酸、錆への耐性が高い904Lや、ニッケルフリーで金属アレルギーを起こしにくい740HVを用いている時計もある。
さらに、SUS304やSUS316Lステンレススチールであっても、DLCコーティング(素材の表面に硬い皮膜を作る加工技術)やテギメント加工(窒素を使用した浸炭加工で、素材そのものを硬化させる技術)がされているものであれば、汗で金属が溶けるといったことは起きにくいため、安心して使用できるだろう。
ケース、ブレスに904Lが採用された、ボール ウォッチのエンジニアⅢ オハイオ。904Lは一部の高級ブランド以外ではほとんど用いられることがなかったが、近年採用しているメーカーが少しずつ増えてきている
文◎松本由紀(編集部)
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