誕生から50年以上を経てなお人気の高いエル・プリメロ。クロノグラフの伝統的な制御方式であるコラムホイールを採用したしっかりとした設計で、10振動というハイビートにして50時間以上のパワーリザーブというスペックは、いまもなお自動巻きクロノグラフの最高峰ムーヴメントとして高い評価を得ている。開発元のゼニスでは、近年もこのエル・プリメロを搭載したヒストリカルなコレクションを積極的に展開しており、クロノグラフ愛好家からの注目度が高い。今回紹介するクロノマスター リバイバル エル・プリメロA3817は、なかでも特に誕生当時のエル・プリメロ搭載機を彷彿させる魅力的なモデルだ。
クロノマスター リバイバル エル・プリメロA3817
■Ref.03.A384.400/3817.M3817。SS(37mmサイズ/12.6mm厚)。5気圧防水。自動巻き(Cal.400)。ブティック限定。96万8000円
このモデルのオリジナルは1971年にリリースされているが、70年代初期に人気の高かった近未来的なトノーケースに、シルバー・グレイ・ブルーのトリコロール文字盤を合わせたデザイン仕様は、当時わずか1000本しか製造されなかったとされる。ケースサイズは37mmとかなり小さく、文字盤はさらに小振りにまとめられており、2021年の新作クロノグラフとしてはかなり異彩を放つ。ただインダイアルは大きめにレイアウトされており、しかもカラーリングを3色使い分けているので視認性は決して悪くない。文字盤のベースはラッカー仕上げで光沢があり、赤い針もアクセントとして効いている。“El Primero”ロゴもクラシカルな筆記体フォントでかわいらしい。クロノグラフということで文字盤の情報量は多いのだが、それを小振りな文字盤にうまくまとめたデザインにゼニスの力量が光る。ケースのポリッシュを含めた質感も素晴らしく、ちょっと小体でスマートな雰囲気だ。
サイズが程良いこともあって腕へのフィット感は上々だ。ケースバックはスケルトン仕様になっており、エル・プリメロのダイナミックな動きが存分に堪能できる。搭載されているのはエル・プリメロでも最もオリジナルに近いCal.400で、ローターにあしらわれたゼニスのロゴと星のデザインがかっこいい。コラムホイールにキャリングアームを備えた質実な設計を見た目で楽しめる点は、機械式時計ファンにはかなり訴求できるポイントだ。ちなみにこのムーヴメントは、パワーリザーブも50時間と強力な点にも注目したい。
ラインナップにはレザー仕様も展開されているが、中コマを抜いたラダータイプのステンレスブレスレットモデルのほうが個人的には好みだ。往年のレーシングウオッチを思わせるデザインで、これは当時の名門ブレスレットメーカーだったゲイ・フレアーが製造していたものを忠実に再現しており、時計自体のクラシカルな雰囲気によくマッチしている。中コマを抜いたことで軽量化されており、それだけ装着感もアップしている。クロノグラフというと大きくて厚くて重いというのが一般的だが、このクロノマスター リバイバルA3817は、現行の機械式時計としてはかなり軽い部類に入るし、細身の腕でも違和感なく着けられるだろう。
スポーティブで嫌味のないデザイン、伝説的な高スペックムーヴメントといったアドバンテージを考えると、100万円を切る価格設定は魅力的に感じる。使い込んでいくほどに味わいが出てきそうなモデルであるし、ちょっと個性的な機械式クロノグラフを物色している人は、候補のひとつに入れてもいいのではないだろうか。
【問い合わせ先】
LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス TEL.03-3575-5861
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構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修