セイコーが腕時計と音楽をミックスするというちょっと変わったグローバルデジタルキャンペーン“CUSTOM WATCH BEATMAKER”を敢行。参加者がパーツを組み合わせてオリジナルモデルを作成し、最多得票を得たモデルが製品化されるというものだった。今回紹介する5スポーツ CUSTOM WATCH BEATMAKER Limited Editionは、まさにその最多得票を得て製品化されたモデルだ。製品化に至る過程がかなりユニークなうえ、いわゆる時計デザイナーではないユーザー目線でのデザインが生かされている点が興味深い。
■Ref.SBSA137。SS(42.5mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.4R36)。世界限定2021本。3万3000円
見た通りベゼルは赤×青のペプシカラー、文字盤はゴールドと、そのスタイリングはかなり派手だ。古くからのセイコーファンならご存じだと思うが、このカラーリングは70年代にNASAのウィリアム・ポーグ大佐が宇宙飛行時に携行した伝説的なスピードタイマーと同じ配色で、そこも多くの票を集めたポイントだったのかもしれない。
デザイン自体は5スポーツの伝統的な意匠を継承しているが、このカラーリングはやはりインパクトが強い。ベゼルは逆回転防止機能付きで、文字盤上にはドットインデックスと太めの針、デイデイト表示を備えている。ケース径は42.5mmとやや大きめだが、文字盤はうまくまとまっており見やすい印象だ。持ってみると想像以上にずっしりと重く感じさせる。重さは167gで数値的には普通の時計よりも少し重い程度なのだが、13.4mmという厚みも相まって、腕に装着したときにずっしりとした感触が伝わってくる。色味のポップさに比してかなりヘビーデューティな雰囲気で、そのミスマッチさもユニークだ。
搭載ムーヴメントは4R36。セイコーではプロスペックスやプレザージュなどの普及価格帯モデルに搭載されることが多い自動巻きムーヴメントだが、精度はまずまずで手巻きも可能。パワーリザーブも41時間備えている。耐久性に優れたハイコストパフォーマンスなムーヴメントなので、安心して使えるだろう。しかもこのモデル、この価格にしてシースルーバック仕様になっており、ローターの動きなどを視覚的にも楽しむことができる。機械式時計入門機としては魅力的だ。
考えてみればこうした押し出しの強いカラーリングの機械式時計はあまり選択肢がなく、セイコーというしっかりしたブランドで、ちょっと遊びのあるデザインのモデルが欲しいというニーズは実は大きかったのかもしれない。ユーザーの新しいニーズを掘り起こしたという意味でも、この製品は意義深いのだと思う。限定モデルとはいえ製造本数が2021本と比較的多いのだが、すでに市場では品切れ状態になりつつあるようだから、やはり注目度は高いようだ。堅牢なケースや機械式ムーヴメント、シースルーバックといった仕様を考えれば、3万3000円という価格は抜群にコストパフォーマンスに優れている。色味の個性が強いだけに、どんなシチュエーションでも使えるという感じではないが、コレクションにこうした時計が1本あると意外に重宝するのではないだろうか。
【問い合わせ先】
セイコーウオッチお客様相談室 TEL.0120-061-012
https://www.seikowatches.com/jp-ja/products/5sports/special/customwatchbeatmaker/
構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎編集部