意外と知らない時計知識

Q5.日常生活において磁気の影響を受けてしまうのはどんなとき?

A.スマートフォンや、タブレット端末のスピーカー部分に近づけてしまったとき

 機械式時計はゼンマイや歯車など、金属製の微細なパーツで構成される精密機器。そのため、時計を所持している方は落下や水没などの取り扱いには十分気をつけているとは思うが、実は意外なところにも罠が潜んでいることをご存じだろうか。それは磁気を発生する電気製品だ。
 なぜ注意しなければいけないかというと、時計が磁気にさらされてしまうと、内部のムーヴメントのパーツの位置や動きに影響が出て、精度が落ちてしまうから。これを“磁気帯び”という。

 一般的な非耐磁時計のJIS(日本産業規格)保証水準は、耐磁能力1600アンペア毎メートル。そして4800アンペア毎メートルで第1種耐磁時計、1万6000アンペア毎メートルで第2種耐磁時計と定められている。
 この数字だけをみても具体的によくわからないかも知れないが、スマートフォンのスピーカー部分で約1万6000アンペア毎メートル、タブレット端末のスピーカー部分に密着させるとなんと約3万2000アンペア毎メートルもの磁気が発生してしまう。
 そのためスマートフォンのスピーカーに密着させてしまうと、たとえ第1種耐磁時計であっても磁力の影響を受けて精度が落ちてしまうということになる。

写真は耐磁性能に優れたロレックスのミルガウス。それぞれ異なる強磁性の合金で作られた磁気シールドをケースのなかに備えることで、およそ8万アンペア毎メートルもの耐磁性能を備える

 機械式時計は1度磁気の影響を受けて磁気帯びすると、途端に遅れや進みといった、精度に狂いを生じさせてしまい後々まで精度に影響を及ぼす。自然には直らないため、時計修理店に持ち込んで脱磁処理をしてもらう必要がある。
 そのため特にスマトーフォン、タブレット端末のスピーカー部には時計を5cm以内に近づけないようにすることが大切なのだ。
 ちなみにアナログ表示のクォーツ時計には磁石の性質を利用したモーターが採用されており、外部から磁気を受けるとモーターの正常な回転に影響が出てしまい止まりや遅れ、進みなどが生じてしまうが、故障をしたわけではないので磁気から遠ざければもとの精度に戻る。あらためて正しい時刻にセットすれば問題ない。
 常に磁気にさらされているいま、もしも磁力を気にせずに時計を着けたいのであれば、より高度な耐磁性を備えたアイテムを選ぶことが重要なのだ。

 

文◎松本由紀(編集部)

 

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