A.逆回転防止機能が付いた60分目盛り付き回転ベゼル
以前、同企画において腕時計の防水性能表示「m(メートル)」と「BAR(バール)はそもそも何が違う?と題して、防水性について明確にし、防水時計と潜水時計(ダイバーズウオッチ)について説明した。
今回は防水性能以外でダイバーズウオッチに求められる重要な機能について解説する。
まずダイバーズウオッチは大きく2種類に区別される。ひとつは酸素ボンベなどの圧縮空気の呼吸気体を入れて、浅海などで潜水するスクーバダイビングなどに使用できる“空気潜水”。もうひとつはヘリウムと酸素の混合ガスの呼吸気体を利用し、深海探査などで潜水できる“飽和潜水”だ。なおBAR表記と違い、文字盤に表示されている水深までの潜水にどちらも耐えられる。
特に飽和潜水で使用するヘリウムガスは、時計の隙間から内部に入り込み、最悪の場合風防が破裂してしまうこともある。
危険を伴う潜水だからこそ、潜水用ダイバーズウオッチを名乗るためにはずばり、ISO(国際標準化機構)またはJIS(日本産業規格)で定められた判読性、耐磁性、耐熱衝撃性などと11項目にわたる細かな基準が設けられている。そして、その筆頭に挙げられているのがぜったいに必要とされている機能、“潜水時間表示計”である。
危険と隣り合わせな深海潜水においては、厳重な機銃に則った、本格潜水用ダイバーズをプロも着用している
潜水時間表示計とは、みなさんもよくご存じの“回転ベゼル”のことである。これについてJIS規格では下記のような基準を設けている。
『不慮の回転の防止または誤作動防止の配慮。および60分間にわたり1分またはそれ以上に細かく、潜水時間の表示をしなければならない。アウターベゼルタイプであれば逆回転防止機能が、インナーベゼルタイプであればねじ込み式リューズを備えているものに限る』
酸素ボンベを使い長い時間潜っているスクーバダイビングの場合、どれだけの時間潜っていたのかを知ることは、あとどれだけ潜っていられるかボンベ内の酸素残量を把握することにつながる。つまりダイバーズウオッチとは本来これを知るための道具であり、それを回転ベゼルの目盛りと分針で知ることができるというものだ。
また、回転ベゼルは逆回転防止機能が必ず付いており、左(時計回りとは逆)にしか回転しない。理由は、誤操作などで右に回転してしまうと、実際の潜水時間より短く表示されてしまい、最悪は命にかかわる事故につながりかねないからなのである。
文◎松本由紀(編集部)
<参考文献>
・日本産業標準調査会『潜水用携帯時計-種類及び性能』
【意外と知らない時計知識】
■Q1.腕時計の防水性能表示「m(メートル)」と「BAR(バール)はそもそも何が違う?【ダイバーズ編】
■Q2.ローマ数字インデックスにおいて、4はなぜ“IV”ではなく“IIII”とするのか
■Q3.時計の時表示はなぜ“0(ゼロ)”ではなく“12”なのか