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かつて人気を博した90年代の時計たち!【第2回|IWC GSTアクアタイマー】

 2回目の今回も前回と同様のIWCからお届けしたい。1998年に登場したGSTアクアタイマーである。名前に付く“GST”とは、97年に誕生したIWCのスポーツ系シリーズであるGSTコレクションに属していることを示す。

 そこでまずはこのGSTコレクションについて触れておくと、クォーツショックとスイスフラン高騰のあおりを受けて、スイス時計産業自体が窮地に立たされていた70年代。IWCも然りで、75年に結んだポルシェ・デザインとのパートナーシップよって生み出された三つの傑作モデル、コンパスウオッチ、チタニウムクロノグラフ、そしてオーシャン2000が大ヒット。これがなければIWCの存続は難しかったのではないか、とまで言われたほど状況は深刻だった。

GSTアクアタイマーのステンレスモデル。もうひとつチタンモデルもラインナップした

 その後97年に協力関係が解消されることとなり、これに代わるIWC流スポーツモデルとして同年に誕生したのがGSTコレクションだったのである。ちなみにGSTとは、G(Gold=ゴールド)、S(Stainless=ステンレススチール)、T(Titanium=チタニウム)の頭文字を組み合わせたもの。何ともストレートなネーミングだが、多機能クロノグラフを中心にいま見ても魅力的なコレクションが展開されている。

 GSTは残念ながら現行コレクションからは姿を消してしまったが、前回取り上げたマークシリーズと同様に日本でのIWC人気を押し上げた代表的コレクションに挙げられるだろう。そしてGSTアクアタイマーは、そんなGSTコレクションのダイバーズウオッチとして98年に誕生した。

 最大の特徴は防水能力の高さにある。当時、プロダイバー向けとして開発されたロレックスのシードゥエラーが1220m防水だったのに対してアクアタイマーは2000mと、約780メートルもロレックスより高い驚異的な防水性能を誇っていた。当時の定価52万5000円に対して実勢価格は20万円台後半(シードゥエラーも定価は同じだが実勢価格は40万円台半ばだった)という値ごろ感も手伝って一躍人気に。飾り気もなく鉄の固まりのような無骨さがかえって受けた。

2000mもの防水性のを実現するため厚さ5mmのネジ込み式裏ブタが採用され、ケース厚15mmとかなりぶ厚いものだった

 搭載する自動巻きムーヴメントはマークXVと同じETA2892ベースのCal.37524。42㎜というサイズはいまでこそ普通だが、約15mmもの分厚いケースも相まって、比較的小振りな時計が多い90年代当時としては異例の存在感を放っていた。ちなみに回転ベゼルにはロック機能が備わっており、下に押しながら回した場合にしか回転しない仕様に設計されている。なお現在のユーズドの実勢価格は40万円前後で流通している。

GSTアクアタイマー
生産終了年:2003年
素材:ステンレススチール(Ref.IW3536-002)、チタン(Ref.IW3536-001)
ケース径:42mm
防水性:2000m防水
駆動方式:自動巻き(Cal.37524)
その他:逆回転防止回転ベゼル、日付け表示
当時の国内定価52万5000円(チタンは50万4000円)

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菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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