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【話題の国産ウオッチを本音レビュー|Vol.15】シチズン シリーズエイト

 8月に11年ぶりとなる自社製機械式ムーヴメントCal.0200搭載機を投入することをアナウンスしているが、今年はシチズンの攻めた製品展開が目立つ。そのなかでSeries 8(シリーズエイト)も再始動することとなった。

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 シリーズエイトは2008年に30代男性に向けてスタートしたコレクションで、“モダン コンフォータブル デザイン”をコンセプトに、都会的なモダニズムと高機能なエコ・ドライブのコンフォータビリティを併せ持つところを売りにしていた。多面構造のケースを研磨の使い分けによってより立体的に仕上げるなど、シンプルでエッジの効いたデザインは評価が高かったが、今回のリローンチではエコ・ドライブではなく機械式ムーヴメントを搭載して、よりメカとしての魅力を強調してきた。

 近年は高級モデルにおいてもエコ・ドライブの利便性を推していたシチズンが、ここに来て機械式ムーヴメントに回帰するような動きを見せているのは非常に興味深いところだ。今回リリースされるシリーズエイトには、“870”、“830”、“831”の3種がラインナップされているが、ここでは最上位機種の870メカニカルを中心に紹介していこう。

Ref.NA1004-87E。SS(40.8mm径、10.9mm厚/設計値)。10気圧防水。自動巻き(Cal.0950)。22万円

 まず外観だが、曲線と直線をバランス良く組み合わせたフォルムで、オーソドックスながらどことなく未来的な雰囲気を感じさせる。面によって鏡面とヘアラインを使い分けることで独特の立体感を生み出している点はシチズンらしいが、さらに目を引きつけるポイントとしては、やはりカラーリングを変えた素材を組み合わせたベゼルだろう。2体構造のユニークなデザインでシンプルなルックスにアクセントを加えている。

 バーインデックスとデイト表示のみとなった3針のシンプルな構成だが、文字盤には光沢感があり、ちょっとした色気も感じさせる。機械式時計ならではのトルクの強さを生かして太い針を合わせており視認性は上々だ。
 ケースの厚みは10.9mm(設計値)で、機械式ムーヴメントを搭載していることを考えるとかなり薄めに仕上げられている。実際装着してみると、腕へ吸い付くようなフィット感が心地よい。これはケース自体の薄さに加えて、ブレスレットのコマがフラットにデザインされていることも大きいだろう。顔つきとしてはかなり締まった雰囲気で生真面目なデザインだが、ケースのポリッシュや文字盤の光沢、薄くてシャープなフォルムといったディテールの工夫が目立ち、野暮ったさとは無縁だ。シンプルなだけに使いやすく、合わせるファッションに悩まされることもないだろう。

 搭載されているムーヴメントは、シチズン伝統の自動巻き90系のCal.0950。パワーリザーブ(約50時間)と耐磁性能のアップにより、より実用的なムーヴメントとして強化された。特に耐磁性能のアップは、PCやスマートフォンなどデジタルガジェットを1日中使うことを余儀なくされるビジネスマンにとって心強いだろう。磁気に1cmまで近づけてもほとんどの場合性能を維持できるJISの“第2種耐磁”の基準をクリアしており、デジタル機器を気にすることなく使用することができる。また時計自体のスマートさも、このムーヴメントの4.1mmという薄型設計ゆえに実現できたものだ。

 シンプルな3針モデルだが、理知的なデザインとムーヴメントの質が高く、安心して長く愛用できそうなモデルに仕上がっている。非常に真面目に作られた雰囲気が感じられ、国産時計ファンには強くアピールできると思う。20万円前後という価格帯は、実はいまの国産時計市場ではかなりラインナップが薄くなっているゾーンで、この価格帯に打って出た点も評価できる。カジュアルウオッチからの卒業を目論んで、ちょっと質感の高い本格的な機械式時計を求めている層にはベストマッチな価格帯なのだが、選択肢があまりにも少ないことで躊躇していたユーザーも多くいたはずだ。そういった意味でも、高級機械式時計の入り口として、このシリーズエイト 870メカニカルはベストなチョイスになり得るだろう。

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎編集部

【問い合わせ先】
シチズンお客様時計相談室 TEL.0120-78-4807
https://citizen.jp

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