生真面目なビジネスウオッチといった印象が強かったグランドセイコーも、最近は積極的にスポーツコレクションに新製品を投入しており、モデルバリエーションの拡充に余念がない。
今回ピックアップしたGMTモデル、SBGJ237はそのなかでも出色の出来栄えといえる。
グランドセイコー スポーツコレクション GMT
■Ref.SBCJ237。SS(44.2mm径、14.4mm厚)。20気圧防水。自動巻き(Cal.9S86)。79万2000円
ケースサイズは44mmとやや大きめ。回転ベゼルの迫力やブルー×ホワイトといういかにもなカラーリングから、一瞬ダイバーズウオッチと勘違いするほどで(防水性能は日常生活用強化防水の20気圧)、44mmという数字よりも大きく見せる。重量も188gとかなり重めで、装着するとずっしりとした重みが伝わってくる。そのため腕が細い人がずっと着け続けているとちょっと疲れるかもしれないし、人によっては大きさもややトゥーマッチに感じるかもしれない。
いまどきのスポーツウオッチではこのくらいのサイズ&重量感は珍しくないとはいえ、繊細なデザインを持ち味とするGSではかなり異色だろう。そういう意味ではかなり攻めたモデルだといえる。
ただ、フレッシュでスポーティブなデザインを引き立てる意味では、このサイズ感は絶対に必要だったはずだ。GMTという機能面を考えても、視認性を確保するために文字盤を大きくすることを重視したのだろう。そういう意味でもバランスは決して悪くないし、むしろ最近の新作ではずば抜けた見た目の魅力を感じさせる。
全体をパッと見て感じる印象は“とにかく輝きがすごい”ということ。ケースサイドのポリッシュは非常に美しくキラキラしているし、ブルーの文字盤も角度によって反射して、微妙にトーンの深みを変えながら光を跳ね返すのが楽しい。
GSは以前からバーインデックスの仕上げに定評があったが、このモデルでも細かく面取りされていて、微細な光も捉えてキラッと反射する。さらにブルー×ホワイトの回転ベゼルもサファイアガラスでカバーリングされており、これがまたやたらとキラキラしている。最初はなんでセラミックベゼルでないのか、とも思ったが、青と白の爽やかなトーンをより引き立てるためにはサファイヤガラスの輝きのほうが効果的だろう。ちなみに使われているブルーはいわゆるミッドナイトブルーで、通常のブルーよりもやや深みが強い。これがホワイトと組み合わされることで、昼と夜を象徴したトーンとして意味をもつわけだ。
これだけ全体がシャイニーな時計は珍しいが、それでいてチャラくならないのはGSの遺伝子をちゃんと引き継いでいるからだと思う。キラキラして艶っぽい印象を放っていても、要所はセオリーに則ったGSらしいしっかりした加工が成されているのだ。ブレスレットの落ち着きあるザラツ研磨やぷっくりとしたラグの形状などからも、GSらしさはしっかりと感じ取れる。
搭載されているムーヴメントはメカニカルハイビート36000のGMTバージョンであるCal.9S86。10振動のハイビートにこだわることで精度を高めるという、スプリングドライブとは別の方向性をもったトラディショナルなムーヴメントだ。
GSのGMTに採用されているこのムーヴメントは、タイムゾーンによる表示時刻調整時にも、秒針を止めることなく時針だけを動かすことができるため、他社のGMTウオッチに比べて時刻調整の操作がしやすいという利点がある。これは実際に海外を飛び回ってGMT機能を多用する人には、なにげに便利なポイントだと思う。ビジネスウオッチとして求められる精度や機能性については申し分ないだろう。
70万円台という価格は、最近の海外製スポーツウオッチと比較するとお値打ち感がある。特にこの仕上げの上質さを考えると、かなり戦略的な価格設定といえるのではないだろうか。従来のGSのように堅めでビジネスシーン一辺倒といった印象だけでなく、オフタイムやアクティビィティでもフルに活躍してくれそうなシャイニーなルックスを考えるとコスパは高いと思う。
なにより見た瞬間に放ってくる輝きは圧倒的だし、一目惚れして買ってしまう人も少なくないのではないだろうか。今年発売された時計のなかでも“欲しい!”と思わせる魅力はトップクラスだ。
スポーツモデルの購入を検討している人には、十分に候補に加える価値がある時計だし、できれば店頭で実物が放つ素晴らしい輝きを体験してほしいと切に思う。
構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎編集部
【問い合わせ先】
グランドセイコー専用ダイヤル TEL.0120-302-617
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