今回はハンドメイドのエナメルダイアルにこだわって、魅力的なモデルを展開している日本未上陸の時計ブランド、anOrdainについて紹介。
手頃な価格で本格的なグラン・フーエナメル文字盤の時計を展開
時計好きを魅了する文字盤の装飾技法として知られているグラン・フー(高温焼成エナメル)。ガラス質のエナメル粉末を文字盤の上に載せ、焼成を繰り返して作り上げるエナメル技法のなかでも最上級の技法に位置付けられており、色褪せず鮮やかな色彩と美しさを保つ反面、通常よりも高温な800度以上で何度も繰り返し焼成するために、手間と時間がかかるのが特徴。技術的な難易度も高いため、これまでは、主にブレゲやブランパンなどの高級ブランドで採用されるのが基本となっていた。
今回紹介する“anOrdain”は、そんなグラン・フー(高温焼成エナメル)を採用し、魅力的なコレクションを展開するスコットランド発の新鋭ブランドだ。建築家でありプロダクトデザイナーのルイス・ヒース氏、タイポグラファーのイモージェン・エアーズ氏、エナメル職人のアダム・ヘンダーソン氏によって2015年にスコットランドのグラスゴーで創業され、ブランド名は、スコットランドのハイランド地方にある小さな湖に由来している。
同社は10人のチームで構成され、そのうち8人はデザイナーでデザインからプロトタイプ、実際の製品に至るまで、自社製造をしている。 例えば、時計の文字盤に描かれているインデックスはタイポグラファーである、イモージェン・エアーズによって作成されたオリジナルのフォントである。時計は全て時計職人クリストファー・ルシアスが、弟子のユアン・マッカー・ローと共に手作業で組み立てている。
同社が他ブランドと一線を画しているのは、グラスゴーの工房でエナメル文字盤を職人が作成し、つつ、日本円で10万円台という手の届く価格帯から展開しているという点だろう。
ガラス質のエナメル粉末を文字盤の上に載せ、800度以上の熱で焼成を繰り返すグラン・フー・エナメルダイアルに加えて、フランス語で“煙”という意味をもつフュメダイアルを採用したモデルをラインナップしている。
同社のフュメダイアルは、通常の銅板とはことなる純銀シートでエナメルを製作した際の“間違い(偶然に生まれたグラデーション)”に注目し、何ヶ月にもわかる実験の後、製品化されたもの。 上の写真は、“anOrdain” が展開しているフュメダイヤルの一例だが、文字盤のエッジにスモークされたような効果がみられるのが特徴だ。
“anOrdain”は最初の時計モデルとして2018年にLochとanOrdain周辺の地図からインスピレーションを得た “モデル1”を発売し、260本全てが完売。 2019年には、伝統的なフィールドウォッチをベースとした“モデル2”を発表し、2020年には、再構築した“モデル1:ニューモデル1”とラインナップを増やしている。
》編集部のおすすめモデル-其の1
anOrdain
New Model 1 – Teal
anOrdainの“ニューモデル1”は5色の文字盤カラーとストラップで展開されており、ケースサイズは38mm。付属のレザートラベルケースはスエード裏地が付き、イタリアのフィレンツェで生産されたペブルグレインレザーで汎用性も高い。
■SS(文字盤:銅プレートにエナメルガラ、38mm径)、5気圧防水。自動巻き(セリタSW-200)。1200ポンド(約16万3200円)
》編集部のおすすめモデル-其の2
anOrdain
Model 2 – Moss Green
“モデル2”は36mmと男女共にピッタリのサイズで、11色のダイヤルカラーとストラップから選ぶことができる。
■SS(文字盤:銅プレートにエナメルガラス、36mm径)、5気圧防水。自動巻き(セリタSW-210-1)。950ポンド(約12万9200円)
》編集部のおすすめモデル-其の3
anOrdain
Model 2 – Purple Fume:
小振りな36mmケースを採用したモデル2のフュメダイアルモデル。ベースになる純銀のシートには手作業でテクスチャー加工と研磨が施されており、このプロセスにより、エナメル質が塗布されると、光がさまざまな方向に反射し、より明るく“くぼみのある”外観となる。
■SS(文字盤:純銀プレートにエナメルガラス、36mm径)、5気圧防水。自動巻き(セリタSW-210-1)。1500ポンド(約20万4000円)
それぞれのエナメルダイヤルは、自社工房で手作りされ、完成までに最低12時間を要する。手作りのエナメルダイヤルを持つ時計は一般的に高額ではあるが、“anOrdain”はリーズナブルな価格で提供している。 カラフルな展開で手頃な価格の手作りエナメルダイヤルを作成するための献身的な取り組みは、エナメルダイアルを採用している他高級時計メーカーとは一線を画すコストパフォーマンスを実現しているといえるだろう。
エナメルダイアルを採用した手頃な本格時計、という新しいジャンルの先駆者として、この先のコレクションにも期待がもてるブランドである。
》anOrdain公式サイト:https://anordain.com
文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
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