よく“アンティーク時計は作りがいい”と言われる。
当時の時計のほとんどが長く使うことを前提に作られていたため、確かにしっかりとしたものは多いのだが、現行品のように気にせずガンガン使えるかというとそれは違う。
なぜなら古いものであることにはなんら変わりはなく、経年による劣化などが避けられないからだ。
そのため普段使いするうえでは、それなりに注意も必要となる。
アンティークウオッチを楽しむには、古いがゆえの弱点も頭に入れておく必要があるのだ。
そこで、アンティーク時計を購入するうえで憶えておいてほしいポイントをビギナーにもわかりやすく紹介していく本連載。最終回は、時計を選ぶうえで見逃せないポイントである「装着感」について解説する。
実際に着けてみた感触が大切
アンティーク時計に限らないが、時計を選ぶうえで重要なポイントが“装着感”である。
と言うのも、いくらデザインや雰囲気が気に入ったからといって、サイズの合わないものや納まりの良くないものをチョイスしてしまうと、“結局は着けずじまい”ということになりかねないからだ。実際、こうした話はよく聞く。
装着感の良し悪しは意外と疎かにできないポイントなのである。
アンティークの場合、標準的なサイズは35mm前後と、40mmを超える現在の基準からするとかなり小さい。
欧米人などに対して手首が細いと言われる日本人には、このサイズ感は実に納まりが良い。
アンティーク時計好きのなかには、この絶妙なサイズ感に引かれたという人も結構多いのだ。
ロレックスのエクスプローラー第3世代のRef.1016は、現行よりもケース径が3mmも小さい。小振りなサイズで手首になじむため、装着感が非常に快適なうえに、スタンダードなデザインのため汎用性も高い。愛用する人が多いのはこうした理由からだろう。 ■Ref.1016。SS(36mm径)。自動巻き(Cal.1570)。1969年製。参考価格200万円〜
サイズが小振りだからといって必ずしも装着感が良いということではないが、手首になじむことは確か。加えてシャツの袖口などの邪魔にもならず、使い勝手はいい。
またケースが小さいということは、そのぶん軽いということでもある。そのため長時間着けていても疲れないなど、普段使いするうえでのメリットは多いのだ。
ちなみに、さらに小振りな32㎜アンダーのモデルなどは、小さすぎるという理由で海外での需要が高くないため、相場も比較的値ごろ。思わぬ掘り出し物が見つかることがあるので、もし違和感なく着けられるのであれば狙ってみるのもいい。
ともあれ、やはり腕時計は実際に着けてみて、サイズ感や雰囲気が自分自身に合っているかどうかを確かめてみることが非常に大切なのである。
それでは最後に、小振りなケースサイズとなったアンティークのおすすめモデルを紹介したい。
チューダー/プリンス
本家ロレックスと同様のオイスターケースを採用し、高い気密性を実現しながらも、手頃な価格で購入できるチューダーのプリンス。この時代特有の“小バラ”ロゴが、文字盤デザインのアクセントともなっており、小振りながらも存在感がある。
■Ref.7995。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.2483)。1966年製。参考価格18万円
ロレックス/エアキング
小振りな34mmケースをもつロレックス・エアキングRef.5500のグレー文字盤仕様。搭載しているのは、アンティーク自動巻きの傑作に数えられる1500系キャリバーである。ちなみに同じレファンスでエクスプローラーと同じ3・6・9文字盤仕様も展開されていた。
■Ref.5500。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.1520)。1975年製。参考価格50万円
レマニア/3レジスタークロノグラフ
オメガにムーヴメントを供給したことでも知られる、レマニアの3レジスタークロノグラフ。この時代、クロノグラフモデルも比較的小振りなものが多かったが、このモデルは32mm径しかない。現在の基準からするとかなり小さいが、クロノグラフの場合、積算計など文字盤に入る要素が多いため、それらが凝縮されて存在感がある。
■SS(32mm径)。手巻き(Cal.1455)。1940年代製。参考価格30万円
文◎堀内大輔(編集部)