時計の強度と美観を大きく左右する外装素材。今回は、定番のステンレススチールを強化したモデルのほか、特殊な素材を採用したこだわりのモデルを厳選。
加工技術が進歩したことでケースの素材が多様化
時計のケースといえばカーボンの含有量を少なくすることで、腐食に強く、耐久性を向上させた316Lスチールが一般的なのだが、近年は加工技術の進歩により、素材の多様化が促進している。
まず注目なのが鋼材に加工を施して強度を高めたモデル。窒素を使用した浸炭加工を施すことにより、鋼材の表面をセラミックと同等まで硬化させたテギメント加工などがその代表といえるだろう。
また、高級素材である904 Lスチール（腐食や酸、錆への耐性に加え、硬度や経年耐性、研磨性が高く、貴金属のような美しい光沢をもつ）を採用したモデルがミドルレンジから登場しているのも最近の特徴。
これまで904Lスチールを採用するのはロレックスなど一部のブランドに限られていたため、選択肢の幅が広がったのはうれしい傾向といえるだろう。
》編集部のおすすめモデル-其の1
DAMASKO（ダマスコ）
DC862
ダマスコのフラッグシップモデル。ETA7750をベースにしながらも、60分同軸積算計と24時間表示を与えられた、自社製ムーヴメントのC51を搭載する。ケースは自社で加工した、アイス硬化ニッケルフリーステンレススチールこと、クロニデュール1.4108製である。一般的なステンレスの4倍以上硬く、904Lよりも耐蝕性に優れている。また、ダマスコオリジナルの、セラミック製のボールベアリングを内蔵した回転ベゼルは非常に精密な感触をもつ。耐磁性能は約8万A/m、そして精度は＋3秒から＋6秒以内。内容を考えれば、価格は驚異的だ。
■Ref.DC86L。SS（43.3mm）。自動巻き（Cal.C51／ETA7750 TOPベース、27石、2万8800振動／時、パワーリザーブ50時間）。100m防水。55万円
アレルギーを起こしにくく、強度に優れたアイス硬化ニッケルフリーステンレススチールを採用。904Lよりも耐蝕性に加えて、マイナスドライバーでこすってもほとんど傷が付かない高度な耐傷性を備えている。
【問い合わせ先】
ブレインズ
TEL.03-3510-7711
公式サイト：https://damasko-watch.jp/productinfo/dc86l/
》編集部のおすすめモデル-其の2
BALL WATCH（ボール ウォッチ）
エンジニアⅢオハイオ
一見、シンプルなエントリーウオッチに見えるが、実はケースに904Lスチールを採用。ケース内部には磁気を積極的に取り込むことで内部へ影響しないうちに受け流す磁気シールド性に優れたミューメタル製インナーケースを採用することで8万A/mの耐磁性も確保している。このスペックで10万円台というのだから驚異的なコストパフォーマンスといえるだろう。
■Ref.NM9126C-S14J-BE。SS（904L、40mm径）。100m防水。自動巻き（Cal.RR1102） 。18万7000円
一般的に使用されている316Lスチールと比べても見た目には違いはほとんどわからないが、904Lは腐食や酸、錆への耐性が高く、研磨性が高いため美しい質感に仕上げることが可能。裏ブタにもしっかりと“904L”の文字が刻印されている。
【問い合わせ先】
ボール ウォッチ・ジャパン
TEL.03-3221-7807
公式サイト：https://www.ballwatch.com/global/jp/home.html
》編集部のおすすめモデル-其の3
SINN（ジン）
U2.J-SBF
2000m防水のU2.SDRをベースに、海上自衛隊潜水艦隊の任務に従事する隊員に向けて開発されたハイスペックダイバー。ケースの素材にはドイツ最新鋭潜水艦に使用される耐食性に優れた“Uボート・スチール”を採用。海水耐性に加えて延性があるため、ひび割れに対して極めて高い耐性があり、さらに一般的な316Lスチールの1.55倍以上の強度を誇る。
■Uボート・スチール（44㎜径）。2000m（200気圧）防水。自動巻き（Cal.SW300-1）。日本限定50本。52万8000円
“Uボート・スチール”を採用していることに加え、特殊結合方式を採用して耐衝撃性を強化した逆回転防止ベゼルには、セラミックと同等以上の硬度を誇るテギメント加工を採用。リューズが手の甲に当たらないデザインもポイントとなっている。
【問い合わせ先】
ホッタ
TEL.03-6226-4715
公式サイト：https://sinn-japan.jp/product/u2.j-sbf/
文◎船平卓馬（編集部）