アメリカ、イギリス、フランス、ドイツと四つの国を中心に、独特の機能美を備えた強者が揃うミリタリーウオッチの魅力を再考。第1回はアメリカが生んだ名作ミリタリーを紹介する。
アメリカ軍の作戦を支えた名作ミリタリーウオッチ
ミリタリーウオッチの多くは、その背景に実際に戦地で使われて発展した歴史をもつ。そのルーツを辿って行けば背景となるヒストリーが存在しており、思わず語りたくなるエピソードも多い。デイリーユースで使いながら、持っていてそれとなく自慢できるというのは、やはり男の装飾品として不変の魅力といえるだろう。今回は、そんな軍用時計を原点に持つモデルのなかから、アメリカが生んだミリタリーウオッチをクローズアップしていこう。
アメリカにおいて腕時計タイプの軍用時計が主に使われはじめるのは第1次世界大戦の頃からである。1914年に勃発した第1次世界大戦にアメリカが参戦したのは17年。このときすでにミッションを遂行するうえで、時計が重要な装備のひとつであると認識が広まりつつあり、同国でもすぐに腕に着けられるタイプの時計の需要が急増していった。
特徴的だったのが、時計を含む軍事物資全般にミルスペックと呼ばれる厳格な規格を定めた点だ。このミルスペックは、ニーズに応じて更新され、品質を一定化するとともに、合理的な調達システムを確立していたのである。
厳格なミルスペックを定めた反面で、ヨーロッパのように陸・海・空軍向けの時計が明確に区別されていなかったのもアメリカ軍の特徴といえる。これは、アメリカ軍が陸軍を中心に組織されていたためと言われている。海軍は第2次世界大戦までそれほど大規模では組織されておらず、空軍に関しても当初は陸軍が航空戦力を受け持っていたため独立した組織として設置されたのが47年と他国より遅かったのだ。
そんなアメリカ軍の時計として最も有名なのが40年から運用された“タイプA-11(上の写真)”と呼ばれるモデルだ。陸軍航空隊で採用されたもので、12時間表示タイプと24時間表示タイプを展開。ハック機能を備えていたために秒単位で各兵士の時刻を同調させることが可能であった。地上部隊と航空機部隊との連動作戦など、オペレーションを精緻に実行するために使用されたと言われている。以降、このタイプ11をベースに、様々なバリエーションが生み出されている。
》編集部のおすすめモデル-其の1
HAMILTON(ハミルトン)
カーキ フィールド メカ
1960年代にアメリカ陸軍で採用されていたハック ウオッチをルーツにしたカーキ フィールド メカの派生モデル。アースカラーPVD加工を施したケース、ダークグリーンの文字盤を採用するなどアレンジを加えているが、文字盤には当時の仕様が継承されている。38㎜径のサイズに加え、重量は約58gと非常に軽量で、着け心地が抜群な点も魅力的だ。
■Ref.H69449861。SS(38㎜径、PVD加工)。5気圧防水。自動巻き(Cal.H-50)。7万8100円
【問い合わせ先】
ハミルトン / スウォッチ グループ ジャパン(TEL.03-6254-7371)
公式サイト:https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/h69449861-khaki-field.html
》編集部のおすすめモデル-其の2
BULOVA(ブローバ)
ミリタリー(MIL-W-3818Aモチーフ)
1956年からアメリカ軍で運用された“MIL-W-3818A”に基づく復刻モデル。“TYPE A-17”とほぼ同じ12時間表記の内側に24時間表記を備えた文字盤が特徴だ。
■Ref.96A246。SS(38 mm径)。3気圧防水。自動巻き。4万2900円
【問い合わせ先】
ブローバ相談室(TEL.0570-03-1390)
公式サイト:https://bulova.jp
》編集部のおすすめモデル-其の3
GLYCINE(グリシン)
エアマンGMT
米軍が正式に支給した軍用時計ではないのだが、ベトナム戦争時に空軍のパイロットから支持を集めた“エアマン”のリバイバルモデル。時間表示の誤作動防止機能が付いた双方向回転ベゼル、24時間で時針が文字盤を1周する24時間表示など、特徴的なディテールが細部まで再現されている。
■Ref.GL0160/GMT。SS(36mm径)。10気圧防水。自動巻き。25万3000円
【問い合わせ先】
元蔵(TEL.03-3957-2827)
公式サイト:http://glycine-watch.ch
文◎船平卓馬(編集部)