懐中が主流だった時代から、時計ケースで最も多く採用されてきた“ラウンド”形。
しかし、20世紀に入って腕時計が徐々に普及してくると、デザイン的な観点からもスクエア、トノー、オーバルなどの丸形以外のケースが登場した。
これらはラウンドケースに比べて数は圧倒的に少ないが、その一方で数が少ないからこそ、ひと味違う個性を主張できるというメリットもある。
また、実際に着けたときの印象もずいぶんと違う。その意味では日々のコーディネイトのアクセントとして選択肢のひとつに加えるのも一考ではないだろうか。
そこで今回は、独自の個性を感じるラウンド“じゃない”腕時計を集めてみた。
【トノー】
アール・デコ全盛期1920年代に誕生し、当時多くの人気を集めた樽形のケースデザイン。直線と弧線を合わせた立体的なフォルムのクラシカルなデザインだが、90年代に発売されたフランク ミュラーのカーベックスがヒットしたことをきっかけに、以降、ふたたび多くの時計に採用されるようになった。
TISSOT(ティソ)
ティソ ヘリテージ ポルト
アール・デコ全盛だった1919年に生まれたティソの歴史的タイムピースを、誕生100周年を記念し忠実に再現した復刻版。レイルウエイを配したスモールセコンドや特徴的なフォントのアラビアインデックスなど、ノスタルジアな雰囲気を感じさせる仕上がりだ。
■Ref.T128.505.16.012.00。SS(42.45×31.1mm径)。3気圧防水。自動巻き(Cal.7001)。12万6500円
ティソ:TEL.03-6427-0366
https://www.tissotwatches.com/ja-jp/
【クッション】
正方形の4辺をふくらませたケースフォルムが特徴のクッションケースは、その名のとおりクッションのような見た目であることに由来する。このケースを用いたモデルで代表的なブランドにパネライなどがある。
TUTIMA GLASHÜTTE(チュチマ・グラスヒュッテ)
ザクセン ワン クロノグラフ
ケース四方のエッジを立たせ、立体感がより強調された特徴的なクッションケースを与えられたザクセン ワン。また槍のような形状となった時分針など、文字盤デザインにもひねりを利かせ、個性が際立っている。
■Ref.6420-05。SS(43㎜径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.Tutima 521)。70万4000円
モントレックス:TEL.03-3668-8550
https://www.tutima-japan.com
【オーバル】
近未来を連想させるデザインが流行した1970年代に、様々なブランドが採用した楕円形のケースフォルムが特徴。当時は斬新だったデザインに、いまはレトロな雰囲気が加わり、新鮮な魅力を感じさせる。
SINN(ジン)
240.ST
1985年にドイツの物理学者であり宇宙飛行士でもあるラインハルト・フラーがスペースラブD1ミッションの際に装着した、ジンの伝説的スペースクロノグラフ140を再設計した新140シリーズの3針仕様。クロノグラフこそ備えていないが、特徴的なオーバルケースを踏襲し、優れた堅牢性をもつ。
■Ref.240.ST。SS(43mmサイズ)。10気圧防水。自動巻き(Cal.SW220-1)。31万9000円
ホッタ:TEL.03-6226-4715
https://sinn-japan.jp/
文◎堀内大輔(編集部)