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【第8回】ポストヴィンテージ時代の腕時計|1990年代のチュードル『クロノタイム』。その人気の理由とは!?

固定タイプのスチールベゼル仕様、Ref.79180

 これまではポストヴィンテージ時代(1970~90年代)でも初期の1970年代の時計について取り上げてきたが、ちょっと飛んで90年代に注目してみたいと思う。そして、今回はチューダー(チュードル)だ。

 いまや日本でも正規販売が開始され、呼称もチュードルからチューダーに変更されているが、アンティーク時計専門誌を刊行している身としてはどうもなじめない。そのため現行モデルの記事ではないこともあり、以前の呼称である「チュードル」を今回は使わせていただくことをお許しいただきたい。

 さて、チュードルだが、もともとロレックスのディフュージョンブランド(普及版)としての位置付けから誕生したこともあって90年代当時においても、クロノグラフはデイトナに当たるクロノタイム、ダイバーズはそのまま同じ名前を冠したサブマリーナ、そしてエクスプローラーに当たるレンジャーというように、ロレックスに準拠したラインナップで展開され、しかもパーツも一部が共有されるなど、時計好きの間に根強いファンはいまだ多い。

 今回取り上げるクロノタイムは、チュードル初のクロノグラフ、オイスターデイト クロノグラフ(初出1970年)から数えると4代目。1976年にクロノタイム名で縦目の3カウンターになってからは、2代目として1990年頃(異説あり)に登場した。

 クロノタイム以前のコレクションと決定的に違ったのは、自動巻きクロノグラフムーヴメント、バルジュー7750が採用された点。構造的に厚い自動巻きクロノグラフを搭載したことから従来よりもケースが厚くなり、日本ではそのケース形状からカマボコケースと呼ばれており、海外のコレクターたちからはこれを大きな塊“ビッグブロック”と呼んで珍重された。

ラグの側面が蒲鉾を切ったときの形状に見えることから“カマボコケース”と呼ばれている。リューズトップの王冠マークの刻印から、ロレックスのパーツが使われていることがわかる

 このクロノタイムにはベゼルの仕様違いで3種類が存在する。固定ベゼルタイプ(タキメーター表示)が2種類。トップ写真のスチールベゼルタイプ、Ref.79180と下の写真で右側の黒のプラスチックベゼルタイプ、Ref.79160だ。そして回転ベゼルタイプ(12表示)は1種類で、下写真の左側、Ref.79170である。

右が固定ベゼルのRef. 79160。左が回転ベゼルのRef.79170

 しかし、90年代半ばには早くもマイナーチエンジ(型番はRef.792xxに変更)が実施される。ムーヴメントに変更がないためインダイアルの配置も変わず、デザイン的な流れを汲んで作られてはいるものの、雰囲気はモダンに。さらに、ケースにも変更が加えられて、象徴だったカマボコケースではなくなり薄く滑らかな形状になるなど、印象はだいぶ変わってしまった。

 また、リューズトップにあったロレックスの王冠マークからチュードルのロゴマークに変更されるなど、全体の雰囲気に加えてこのこともクロノタイム初代(Ref.94xxx)と2代目(Ref.791xx)がいまだに人気が高い理由なのである。

 気になる実勢価格は、コンディション次第でもだいぶ変わるが、固定ベゼルで70〜80万円台。回転ベゼルだと100万円前後の相場となるようだ。2000年代の初期には20万円台で買えたが、ロレックスの高騰に引っ張れるように値上がりし、残念ながらだいぶハードルが上がってしまった。

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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