毎月1回、テーマを変えて時計の基礎知識をビギナー向けに解説する。第3回のテーマは“ステンレススチール”をクローズアップしていこう!
時計の定番素材、ステンレススチールに改めて注目
腕時計のケースやブレスレットに使用されている定番素材といえば、やはりステンレススチールだが、台所のシンクや窓枠など時計以外にもステンレススチールが様々な場所で使用されており、そうした素材と高額な時計に使われているスチールが同じものなのか、それとも違うのか、正確な情報を知っている人は意外に少ないだろう。
》そもそもステンレススチールって何!?
ステンレスは“錆びない”という意味の名前の通り、錆びに非常に強い特性を備えた鋼材。鉄にクロム、ニッケルなどの物質を加えて耐錆性を強化した合金のひとつだ。
大まかにステンレススチールといっても非磁性で加工性が高いオーステナイト系ステンレス、磁性があり食器類や台所用品などに使用されることが多いフェライト系ステンレスなど様々な種類があり、時計の素材には一般的にクロムニッケルを主成分とし、耐食性、非磁性で加工、溶接がしやすいオーステナイト系の素材が採用される。そして、時計に使われているオーステナイト系のスチールにも、代表的なもので4つの素材が知られているのだ。
それぞれ、細かい特性はあるが、腕時計の素材として注目した場合に重要になってくるのが、耐食性や耐アレルギー性だろう。時計に使用されるステンレススチールは基本的にアレルギーを起こしにくい素材なのだが、それでも種類によってアレルギーを起こしやすいものと、起こしにくいものがあるのだ。
最もアレルギー性が低いのが高級素材である904L(耐アレルギー性に加え、腐食や酸、錆への経年耐性、研磨性が高く、貴金属のような美しい光沢をもつ)。次に316L、304Lの順となる。304L を採用しているのは安価な時計に限られるが、肌が弱い人はアレルギーを起こす可能性があるため、316Lか904Lを選ぶのがよさそうだ。
これまで904Lスチールを採用するのはロレックスなど一部のブランドに限られていたが、最近ではミドルレンジからも904Lスチールを採用したモデルが登場している。今回は、そんな904Lスチール採用モデルを紹介していこう。
》編集部のおすすめモデル-其の1
BALL WATCH(ボール ウォッチ)
エンジニアⅢ オハイオ
316Lスチール以上に腐食に強いものの、高硬度かつ成形加工に特殊な技術が必要なために、これまでは一部の高級ブランド以外ではほとんど用いられることがなかった904Lスチールを採用。ケース内部には磁気を受け流す磁気シールド性に優れたミューメタル製インナーケースを採用し、8万A/mの耐磁性も確保している。このスペックで10万円台というのだから驚異的なコストパフォーマンスといえるだろう。シルバー、ブラック、ブルーと3種の文字盤がラインナップされている。
■Ref.NM9126C-S14J-BE。SS(904L、40mm径)。100m防水。自動巻き(Cal.RR1102) 。18万7000円
【問い合わせ先】
ボール ウォッチ・ジャパン
(TEL.03-3221-7807)
https://www.ballwatch.com/global/jp/home.html
》編集部のおすすめモデル-其の2
SINN(ジン)
3006
ムーンライト表示という複雑機能を持つジン社初のハンターウオッチ。6時位置に配置されたムーンライト表示には、夜光が施された月のシンボルが付いており、夜間のハンティング時に月明かりがいつ最高潮に達するのかを表示する(ドイツ連邦狩猟法では狩猟の際に人工的な光源の使用が禁じられている)。風防の曇りを防止するArドライテクノロジーなどの独自テクノロジーに加え、ケースには904Lスチールケースを採用。サテン仕上げを施した表面にテギメント加工を施すことでセラミックと同じ1200ビッカーズまで硬度を高め、時計に傷が付くのを防いでいる。
■Ref.3006。SS(904L、44mm径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.ETA7751)。72万6000円
【問い合わせ先】
ホッタ(TEL.03-6226-4715)
https://sinn-japan.jp/product/3006/
文◎船平卓馬(編集部)