2021年のモデルチェンジ候補として挙げられる3100系を搭載するモデルとして4回にわたってサブマリーナをお届けしてきたが、今回から第2弾としてエクスプローラー I を取り上げる。そこでまずはエクスプローラー I とはどんなモデルなのかを簡単におさらいしておきたい。
初出はサブマリーナと同じく1953年。実にいまから半世紀以上も前のことである。“過酷な冒険にも耐えうる性能”、つまりアドベンチャーウオッチを目指して開発されたことから、日本語の“冒険者”を意味するネーミングが与えられた。そのため、スマートな外装に個性的なベンツ針、そして3、6、9のアラビア数字にバーインデックスという、シンプルながらもメリハリの効いた文字盤デザインとなっている。しかもムーヴメントはカレンダー機構を持たないクロノメーター機が採用されるなど、とにかく視認性と耐久性を重視した作りだ。
エクスプローラー I 。Ref.214270。SS(39mm径)。100m防水。自動巻き(Cal.3132)。国内定価68万7500円
53年5月の世界初のエベレスト登頂に成功したことで世界的に知られるニュージーランドの登山家、エドモンド・ヒラリー卿率いるイギリスのエベレスト探検隊が、このエクスプローラー I の宣伝として起用されたことは有名な話だ。そのため多くは登頂にエクスプローラー I が携行されたと思ったのではないか。
しかし近年になって、登頂に同行していたカメラマンが着けていたというオイスターパーペチュアルが有名オークションに出品されたことから、実際に携行されたのはエクスプローラーではなくスタンダードなオイスターパーペチュアル(Ref.6098か6150)だったのではないかという説が浮上。
ロレックスは公式にはオイスターパーペチュアルとしか発表しておらず、いまではこの説が有力視されている。つまり、もしこれが事実だとすれば、ロレックスの巧みなPR戦略は見事に成功したということになるだろう。
一方、日本にもエクスプローラーⅠにまつわるちょっと変わった逸話がある。今回のタイトルに「かつてロレックス人気を牽引したエクスプローラー I 」とした理由だ。
実は90年代後半から2000年初頭にかけて、エクスプローラーⅠが絶大な人気を博した。それはあるTVドラマがきっかけだったのだ。98年に大ヒットを飛ばした木村拓哉氏主演のドラマだ。当時、彼は20〜30歳代に圧倒的な影響力をもつファッションリーダー的存在。そんな彼が人気ドラマのなかで着用したのだから注目されないわけがない。その反響はすさまじく、店頭が品薄状態に陥り、当時並行市場で30万円台だった実勢価格が60万円前後にまで跳ね上がったほどだ。つまり、ロレックスの存在と魅力を日本人に広く知らしめ、その後のロレックス人気を引っ張っていったのは、実はエクスプローラーⅠだったと言っても過言でない。
以前「【ロレックス】通信 No.031|読者が選んだ欲しいロレックス2020、人気ベスト10(前編)6位〜10位」で取り上げたように、いまでこそ7位だが、かつては常にデイトナとサブマリーナデイトと並んでベスト3に入る人気モデルだった。
実際に所有している人は、1番の魅力を「シンプルで着けやすく飽きのこないデザイン」を挙げる人は多い。スポーツ系モデルに属するも、どちらかというと端正な顔立ちのため、見た目はスポーツモデルというよりも、スタンダードなブレスモデルといった印象で、スーツスタイルにも合わせやすく使い勝手がいい点を評価する人は多い。
当初は針の長さが36mm径の旧型(写真左)と同じ長さだったが、2016年にマイナーチェンジできっちりと修正が施された
2010年登場の現行モデルも基本的なデザインは60年以上経った現在も変わっていないが、旧型(Ref.114270/2001〜2009年)との違いが大きく二つある。ひとつはケースサイズだ。時代を反映してなのか39mm径へ3mmサイズアップされている。大きすぎることもなく絶妙なサイズ感として評価は高い。
ただケースを拡大したはいいが、針の長さが36mm径の旧型と同じ長さだったことから、デザインバランスが悪いという声が挙がった。そうしたファンからの不評をロレックス側も把握していたのかは定かでないが、2016年にマイナーチェンジできっちりと修正が施された。
そして、もうひとつの違いはムーヴメント。耐磁、耐衝撃性に優れるブルー・パラクロム・ヒゲゼンマイに加えて、耐震装置であるパラフレックス ショック・アブソーバーも新たに装備され、冒険家の名に恥じない堅牢性と耐久性を有したモデルに進化を遂げたのである。
さて、来週はエクスプローラーⅠを購入する場合のポイントについて整理してみたいと思う。