【メイン機能の紹介】
カシオが誇る大ヒットシリーズ“G-SHOCK(G ショック)”。その人気の理由はひと目でわかるアイコニックなデザインに加え、防水性や耐衝撃性といったタフネス性能を備えている点といえるだろう。
2020年2月、そんなGショックから注目の新モデル“GBD-H1000”が発表。そして本日5月22日(金)に発売された。
本作は、“Gショックユーザーに向けた、トレーニングと日常使いどちらでも活躍する多機能ウオッチ”というコンセプトのもと開発。本格的なトレーニングを行っている人から、健康維持に役立てたい人もターゲットとなる時計を目指した。
人気のGショックの新シリーズが出るということで、非常に興味を持っていた筆者。今回の商品の一番の注目ポイントについて、開発にあたり取りまとめ役として指揮を執った牛山さんに話しを伺った。
商品企画部チーフ・エンジニア牛山さん
「本作で特に注目してほしいのが、GPS機能と心拍計の機能が搭載されたことです。特にGPSと心拍計を同時に搭載したのはG-SHOCKで初めてとなります。この二つが備わったことにより、トレーニングの際の重要な指標となる“運動強度”と“最大酸素摂取量”が計測できるようになりました」
各担当者、本当に大変だったと思います。牛山さんのその言葉に、その場にいた他の開発者のなかには、その過程を思い出すかのようにうなずく人も。
そして今回特別に、そんな各開発担当者に直接話を聞くことができた。開発にあたって苦労したポイントや工夫したところなどの開発当時の話しを交えつつ、その機能を紹介していく。
【注目ポイント1:GPS と心拍計を搭載した狙い】
APプロジェクト・チーフエンジニア東別府さん
「GPS と心拍計両方を搭載したことで、本来自分がもっている体力のうち、どの程度体に負担をかけて運動をしているのかを示す“運動強度”と、運動中に取り込める単位時間当たりの酸素量“最大酸素摂取量”を計算できるようになりました。二つのデータを元に、個人に合ったトレーニングプランを、アプリケーション上で作成することができます」
イージーモードからハードモードまで様々なレベルを選択の上、1 週間分のトレーニングプランを立ててくれるこのアプリケーション機能。トレーニングにあてる曜日をこちらで指定しておけば、自分の都合に合わせて柔軟なプランニングも可能だ。またスマートフォン上にて、トレーニングの分析データや移動軌跡、消費カロリーなども確認することもできる。
このように様々な機能を搭載した本モデルだが、操作方法はホーム、アクティビティー、そのほか時刻の設定などができる三つのボタンのみと、いたってシンプル。初めてトレーニングアプリに触れた人でも扱いやすいように配慮されている。
もうひとつ注目ポイントなのが、トレーニングを予定通りに達成できなかったときのリプランニング機能だ。
東別府さん
「あくまで継続のしやすさを重視して開発しました。目標が達成できなかった場合でも、結果をフィードバックしてより取り組みやすいプランを再作成することで、心理的な負担が少なくなるよう工夫しました」
なかには健康を保っていくためのトレーニングとして、精神的なモチベーションを高める後押しをしたいと語った東別府さん。自らもハーフマラソンの出場を目指して、Gスクワッドを活用してトレーニング中だという。“トレーニングを始める”というとどうしてもハードルが高くなりがちだが、これなら健康管理ツールとして、気軽に始められそうだ。
このように最新技術を搭載している本作だが、G ショックとしての機能もしっかり備えている。それが表れているもののひとつが、防水性能だ。
【注目ポイント2:20 気圧もの高い防水性】
さて、アプリケーションについて聞いてきたが、今回もうひとつ注目すべきが、20気圧もの防水性を備えていること。一般的なGPS や心拍計を搭載したスポーツウォッチでは、5気圧や10気圧のものが多く、なかには日常生活防水レベルのものもあるなか、どうやって20気圧もの防水性を実現したのだろうか。
モジュール企画室・吉井さん
「このモデルは歩数計測や、通知機機能など日常的に使用する分にはソーラー発電だけでまかなえるのですが、GPS やHR を使ってトレーニングをすると消費する電力が多くなるため、充電ケーブルをつなげる接触充電方式を採用しました。ただ、心拍を計測する光学式センサー用の窓とともにケーブル接続部を設けなければならないため、防水性を確保するのが大変でした。しかしGショックの1 コレクションである以上、防水性は譲れません。外装担当の土居さんに頼み込んでケーブル接続部を裏ぶたへ固定する方法を色々試行錯誤してもらい、最終的には、特殊断面形状のパッキンの採用と、別パーツの金属プレートで固定する構造にすることで、20気圧防水を実現しました」
最先端の技術を搭載しながら、従来と同じ防水性能を備えているGスクワッド。長年Gショックを手がけてきたカシオだからこそできる、時計製造といえよう。
【注目ポイント3:デザイナーと設計の努力で実現したケースデザイン】
時計のケース製造は、まずデザイナーから時計のデザインが上がってきて、それを設計者が形作るという手順で出来上がる。デザイナーと現場の設計担当者の意見が異なり、実現が難しいこともしばしばあるのだとか。
本作は特にデザイナーと設計部でかなりの意見交換を要したとのこと。一番の課題であったのは“サイズ”であったようだ。
「色々無理を言いました……」
こう語ったのはデザイン担当の山本さん。できる限り小振りなケースサイズを実現するべく、設計担当の土居さんと何度も協議を重ねたという。
外装開発部・土居さん
「最初に上がってきたデザイン案の段階で、外装として使える部分がかなり小さく、正直難しいのではないかと頭を悩ませていました。そんななか上がってきたデザインデータを確認したところ、さらに小さく削られていたので、これには驚きました。スポーツモデルということで、レンジマン(GPS 搭載2018 年発売モデル)よりもコンパクトにしたいという要望だったのですが、それには、構造を一から見直さなければなりませんでした。最も苦労したのはベゼル部分ですね」
樹脂とメタルを複合構成したベゼル部分。ベゼルの上下でパーツを分けることで、無駄な部分を省いている。またボリュームを少なくしただけでなく、考慮しファインレジン製のバックカバーを採用することで、手首のなじみが良くなった。
そんななかやっとのことで完成したケースデザイン。特にこだわったポイントはどの部分だったのだろうか。
デザイン担当・山本さん
「どうしても譲れなかったポイントはサイズ、そして装着感です。ケース全体をこれまでになかった二重構造にすることでサイズダウンに成功しました。またケース裏に配したバッグウィングパーツや、ベルトの穴の間隔を狭めたことで、高い装着感を実現しています」
そしてもうひとつこだわったのが、このプッシュボタンのデザイン。これはトレイルランニング用のスニーカーのソールに着想を得たもので、タフとスポーツの中間を目指した本作と類似点を感じ、採用したのだという。シューズでいうところの地面を引っかくように、指で押しやすいデザインになっているのが面白い。
さて、冒頭でGスクワッドの注目ポイントはGPSと心拍計を同時に搭載した点だと述べたが、開発にあたり各分野の担当者それぞれが新しい試みをし、いかに心血をそそいだのかがおわかりいただけただろうか。
実機を見て改めて感じたのは、ケースデザインも機能面でも“使いやすさ”を重視して作られているということ。特にアプリケーション機能は、トレーニング用の時計に触れたことがない筆者でも、わかりやすく操作することができたのが印象的であった。
タフネスウオッチGショックと最新技術が融合した注目のスポーツウオッチ、Gスクワッド。自らの健康管理のため、またマラソンに挑戦してみたいという人も入手してみてはいかがだろうか。
(※取材日:2020年2月21日)
※ほか全4種類で展開、2020年5月22日(金)発売
文◎佐波優紀(編集部)
【問い合わせ先】
カシオ計算機お客様相談室
TEL.03-5334-4869
Gスクワッド紹介サイト
https://g-shock.jp/products/g-squad/