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【これは狙い目】グランドセイコーと双璧をなした、手頃な国産アンティーク時計

 今年、誕生60周年という節目を迎え、これを記念して発表されたアニバーサリーモデルも注目を集めるグランドセイコー。
 いまやメイド・イン・ジャパンを代表する高級腕時計として定着し、国内外で人気を集めるグランドセイコーだが、かつてこれと双璧をなすモデルが展開されていたことはご存じだろうか。

 それがグランドが発表された翌年の1961年に登場したキングセイコーだ。

“グランド”と“キング”。

 そのネーミングからもわかるとおり、いずれもセイコーブランドの頂点モデルとして展開されたのだが、ではなぜ同時期に二つの頂点モデルが展開されていたのか、疑問に思う人もいるだろう。

 理由は、当時のセイコーでは諏訪精工舎と第二精工舎という、独立して製品開発を行う二つの製造拠点を有していたためだ。
 国内における本格的な腕時計メーカーはまだ数えるほどしかなかった当時。セイコーでは、あえて二つの製造拠点を独立させることで、それぞれが競い合い、技術レベルを高めていこうと考えたのだろう。

 こうして諏訪精工舎からは“グランドセイコー”が、第二精工舎からは“キングセイコー”が生まれたというわけである。

グランドセイコーの初代モデル(左)とキングセイコーの初代モデル(右)

 先に登場したグランドセイコーは金張りケースを採用し、さらに製品一つひとつに歩度証明書を付けるなど、生産性を度外視し、すべてにおいて“最高級”を目指したモデルであった。国家公務員の大卒初任給が1万円ほどだった当時、その価格は2万5000円もしたのだからかなりの高級品だ。

 対して、キングセイコーは、“高精度”という押さえるべきはポイントは押さえつつも、リーズナブルな価格で提供することを前提に作られたモデルであった。そのため価格は1万5000円とグランドセイコーよりも1万円も安く設定されていた。

 こうした差があったことに加え、すでにその系譜も途切れてしまっていることから、今日アンティーク市場での評価はグランドよりも下に捉えられがちのキングだが、実際には性能的に大きく見劣りするものではなく、むしろ、整備さえ怠らなければいまなお使えるアンティークウオッチのひとつだ。

 しかも、相場はグランドに比べてかなり値ごろという点も見逃せない。
 アンティークゆえにコンディションや年式などによっても相場は結構違うため、一概には言えないが10万円以下でも十分良品が狙える。

クロノメーター仕様となったキングセイコーの第2世代。生産数が少ないため相場は20万円前後とシリーズのなかでも若干割高だ

自動巻きの56系キャリバーを搭載したキングセイコー。バリエーション、生産数ともに多いため、相場も値ごろで狙いやすい

 ファーストアンティークの選択肢としてもキングセイコーはかなりおすすめである。

 

文◎堀内大輔(編集部)

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