たびたび取り上げているが、毎回好評を得ているのが購入予算や価格を軸に時計を紹介する企画。特に注目度が高いのは、10万円台（税込み価格で20万円未満）の価格で購入できる腕時計だ。
消費税増税が実施されたこともあり、10万円台の価格で購入できる時計は減ってしまっているかと思いきや、探してみると魅力的なアイテムが、実はまだまだたくさん市場には存在している。しかも、弛まぬ時計製造技術の進歩も手伝って、ひと頃であれば10万円台の価格では買えないような優れたクオリティや作りを伴った魅力的な腕時計を買うことができる。
そこで本企画では数ある時計のなかから、厳選に厳選を重ね“こんなモデルがあったんだ！”と、思わず目からウロコのお買い得なモデルだけを紹介する。
904Lスチールの時計が10万円台で買える時代に
サージカル（外科手術用）スチールとも呼ばれ、高級素材とされる316Lスチール。かつては高級時計にふさわしい素材として特別感があったが、いまや時計の外装素材として普及し、珍しいものではなくなった。
そんななか、ブランド各社は特徴を打ち出すべく、様々な素材を時計の外装に用いるようになった。
ただし、そうした特別な素材を用いた時計というのは、かつては10万円台の価格帯で購入することは難しかった。加工が難しいカーボンなどは良い例だろう。
なかでも驚きなのは、ボール ウォッチだ。316Lスチール以上に腐食に強いものの、高硬度かつ成形加工に特殊な技術が必要なために、これまではロレックス以外のブランドではほとんど用いられることがなかった904Lスチールを採用したモデルを手掛けているが、なんと10万円台の価格でリリースしている。
はっきり言ってこれは驚くべきことだ。
Recommend Model １
BALL WATCH（ボール ウォッチ）
エンジニアIII オハイオ
あのロレックスも使用する“904Lスチール”を採用！
ありふれたシンプルウオッチのように見えるが、本作ではなんとケースに904Lスチールを採用している。加えて、磁気を積極的に取り込み内部へ影響しないうちに受け流す磁気シールド性に優れたミューメタル製インナーケースを採用することで8万A/mの耐磁性を確保。それでいて10万円台というのだから驚きを隠せない。なお、シルバー文字盤のほか、ブルー、ブラック文字盤がラインナップされる。
■Ref.NM9126C-S14J-SL。SS（904L、40mm径）。100m防水。自動巻き（Cal.RR1102） 。18万7000円
一般的な316Lスチールと比べても見た目には違いがわからないため、本当に904Lスチールを採用しているのか疑問に思う人もいるかもしれないが、ケースバックにはしっかりと“904L”の文字が刻印されている。
904Lスチールの採用や高耐磁、100m防水など、およそ10万円台の時計とは思えない特長を備えるが、時計自体は極めて扱いやすくシンプルなのでガンガン着けられるのがうれしい。
【問い合わせ先】
ボール ウォッチ・ジャパン
TEL：03-3221-7807
ボール ウォッチ公式サイト
http://www.ballwatch.com
Recommend Model 2
G-SHOCK（ジーショック）
MTG-B1000
初のカーボン積層ベゼルで軽さと耐久性をさらに追求
金属と樹脂の特長を融合させたMT-Gシリーズの最新作として、2019年10月に登場した本作。ポイントはシリーズ初となるカーボンベゼルを採用した点だ。カーボンは樹脂並みの軽さと金属と同等以上の高い剛性をもつ一方、切削をはじめとした加工が難しい素材。積層立体成形技術と切削技術の向上を図り、複雑な構成のベゼルパーツへの採用を可能にした。また、金属パーツの裏にファインレジンを重ねたレイヤーコンポジットベルトは、その軽量感とは裏腹に優れた耐久性を実現した。
■Ref.MTG-B1000XBD-1AJF。カーボンベゼル、樹脂（51.7mm径）。20気圧防水。ソーラー駆動（タフソーラー充電システム）。14万8500円
ベゼルは、カーボン織材とカラーファイバー織材に樹脂を組み合わせた2種類のシートを幾層にも重ねて立体成形。織材の層をデザイン的アクセントとしても取り入れている。
G-SHOCKならではの耐衝撃構造を実現するためにケースのサイズや厚みはそれなりにあるが、着けてみるとその大振りで重そうな外見を裏切る軽快な着け心地。頑丈な作りでも重い時計は苦手という人にもオススメだ。
【問い合わせ先】
カシオ計算機 お客様相談室
TEL：03-5334-4869
G-SHOCK公式サイト
https://g-shock.jp
Recommend Model 3
VICTORINOX SWISS ARMY（ビクトリノックス・スイスアーミー）
イノックス カーボン メカニカル
1260℃の熱にも耐え得るカーボンコンポジット製
10mの高さからの落下、総重量64トンの戦車の下敷きになっても耐える強度など、いくつもの過酷な使用条件を想定し130の強度テストを課し、それに耐え得る並外れた耐久性を実現させたイノックスコレクション。本作は、コレクションのなかでもケースに軽量かつ耐傷性に優れたカーボンコンポジット材（ケースバックはチタン）を採用した意欲作。腕時計そのものが魅力的なのはもちろんだが、ベゼルを覆うバンパーと限定仕様の“スパルタンPS”マルチツールを同梱したスペシャルパッケージという充実の内容も大きな魅力のひとつ。
■Ref.241866.1。カーボン（43mm径）。20気圧（200m）防水。自動巻き（Cal.SW 200）。18万7000円
本作は、なんと宇宙での使用を想定して大気圏再突入時の1260℃を超える摩擦熱からスペースシャトルを保護するべく用いられる、カーボンコンポジット材をケースに採用。
カーボンならでは軽量感も魅力だが、衝撃を受けてもインデックスが取れないように1枚素材をプレスしたエンボス文字盤や、ケースよりも1段下げた内側に設置して風防に直接衝撃が加わらない構造など、見どころが豊富。
【問い合わせ先】
ビクトリノックス・ジャパン
TEL：03-3796-0951
ビクトリノックス・スイスアーミー公式サイト
https://www.victorinox.com/jp
構成・文◎佐藤杏輔（編集部）／写真◎笠井 修