女性編集者がレディースウオッチの新作を実際に見て、感想を交えて紹介する本企画。今回はDIOR(ディオール)の人気コレクション“グランバル”から、ホワイトの羽とピンクゴールドのコントラストが美しい“ディオール グランバル プリュム ブランシュ”を紹介する。
【モデル紹介】
文字盤側にローターを配したデザインが特徴的なコレクション“グランバル”。2011年の発売以来、文字盤のデザインからローターの素材まで様々なバリエーションが発表されてきた。なかでも今回注目したのは、2019年1月発表の“ディオール グランバル プリュム ブランシュ”。ローターに羽を用いていることや、文字盤に配された花のモチーフが気に入りセレクトしてみた。
弊誌“2019〜2020機械式腕時計年鑑”でも掲載している“ディオール グランバル プリュム ブランシュ”。誌面で時計の画像を目にした当初から“文字盤側にローター”というスペックに興味を持っていた。
一体どんな動きをするのだろう。華やかな装飾がついたローターが動く様子を実際に見てみたい。そう思っていたところ、取材を通じて実物を目にすることができたので紹介したい。
実機を見てまず目についたのは、やはり文字盤に配されたローター。取材の際に“可愛い!”とつい声をあげてしまったほど、羽やダイヤモンドがあしらわれたローターがくるくると揺れ動く様はとても可憐だった。筆者のみならず、多くの女性を虜にすること請け合いだ。
この特徴的なデザインを実現しているのは、ローターだけを文字盤側に配した自社製ムーヴメント“Dior Inversé 11 1/2”。ディオールが時計製造のために設けたアトリエ“ザトリエ オルロジェ ディオール”にて、スイスのムーヴメントメーカーであるソプロード社との共同開発により作られたもので、アイデアの着想から完成まで18カ月の歳月を費やしている。まさにオートクチュールブランドの発想力とムーヴメントメーカーの製造技術が合わさって開発された力作だ。
ところで、ローターを文字盤側に取り付けるという斬新なアイデアはどのようにして生まれたのだろうか。その発想の原点はコレクション名の“グランバル”が示している。
grand bal(グランバル)の“バル”とは“舞踏会”を表すフランス語。つまりグランバルとは大舞踏会という意味になる。女性がイブニングドレスをなびかせながら踊る様子を、ローターの動きを生かして表現しているのだ。
創立者のムッシュ ディオールが舞踏会好きであったことから、メゾンのアイコン的デザインとして採用された。
ちなみにローターの美しい動きは、下のリンク先にて確認できるので、参考にしてほしい。
そうした由来を踏まえて改めてローターを見ると、動きだけでなくデザインにも舞踏会らしい要素が含まれていることがわかる。
ローターの中心部には2列にわたってサイズの異なるダイヤモンドが散りばめられているが、これはドレスのウェスト部分を表現したもの。さらにローターをドレスに見立てると、裾にも小さなダイヤモンドが均一に連なっているのがわかる。これはピンクゴールドの上にダイヤモンドが設置されたもので、ローターの動きに合わせてそれぞれ異なる輝きが楽しめるのがポイントだ。
ローター以外にもぜひ注目してもらいたいのが、ホワイト文字盤に配された大きな花のモチーフ。花を形作る線の正体は、なんと細く伸ばしてゴールドを糸状にしたもの。文字盤に金糸の刺繍が施されたような、とても繊細で芸術味あふれる意匠だ。
【装着感は?】
ラグ部分は手首に沿うように緩やかに曲げられているため、フィット感が高く、手首によく馴染むのが特徴。機械式時計であるためクォーツよりは重みを感じるが、時計を着けている感覚を程よく感じられて個人的にはとても好みだ。
ケース径は36mmと日本人の手首には少し大きいかもしれないが、特徴的なローターのデザインを楽しむには、このくらいのサイズが最適だろう。
【推しのポイント】
・文字盤に大きな花が咲いたようなデザイン
文字盤の花のモチーフは、中心部ほど色味を強くすることで、ローター中心部のピンクゴールドとマッチ。羽とラッカー仕上げという異素材を使用しながらもローターと文字盤に一体感が生まれ、先ほどまでスカートに見えていたローターが今度は花びらにも見えるのが面白い。文字盤全体がまるでひとつの花のような、見れば見るほど魅力的な時計だ。
・綺麗な羽の秘密
スカートにも花びらにも見えるきれいな羽。一体どんな素材を使用しているのか気になって聞いてみたところ、実は使われているのは雄鶏の羽だという。
前述した“ザトリエ オルロジェ ディオール”で約半年にわたる研究の結果、耐久性に優れた雄鶏の羽を採用した。使うのはすべて、鶏を生かしたまま集められた羽で、蒸気による洗浄と消毒作業を経てローターに取り付けられる。ディオールが厳選しているとはいえ、意外と身近な鳥の羽を使用しているのは面白い発見だった。
今回紹介したモデルは羽根と花をモチーフにしたデザインだったが、過去にはローターにコガネムシの羽や、マザー オブ パールを使用したモデルも登場している。使う素材によって時計の雰囲気もかなり変わるので、ぜひこれまでのラインナップも見てほしい。
一般的に男性の嗜好品、というイメージが強い腕時計。特に機械式時計を着用している女性は少ないのが現状だが、ムーヴメントをジュエリーのように作り変えたディオールの斬新な試みは、すでに時計が好きな女性のみならず、多くの女性の心を掴むだろう。
*スペック*
文◎佐波優紀(編集部)
【問い合わせ先】
クリスチャン ディオール
TEL:0120-02-1947
ディオール 公式サイト
https://www.dior.com/ja_jp