機械式時計は、電池式の時計に比べて連続駆動時間が圧倒的短い。
どのくらい短いかというと、一般的な電池式時計が約2年駆動するのに対し、機械式はおおよそ42〜46時間、つまり2日程度だ。
これほどの駆動時間に違いがあるのは、ずばり“動力源”が異なるからである。
ここで改めて機械式の動力源についておさらいしたい。
機械式の動力源となっているのは、“ゼンマイ”と呼ばれるもので、この正体は細長い金属板を渦状に巻いたものだ。
ゼンマイ(主ゼンマイとも)を伸ばしたところ。これを渦状に巻いて香箱と呼ばれるパーツ(右写真)に納められる。このゼンマイのほどける力が香箱を通じて歯車に伝達され、針が動く
ざっくり言うと、機械式時計はこのゼンマイがほどける力を制御して、規則正しく針を動かす仕組みとなっている。
このゼンマイがほどけきってしまうと、当然、時計も動きを止める。つまり、このほどけきるまでの時間が機械式時計の最大駆動時間となるのだ。
ちなみに、このほどけきったゼンマイを改めて巻き直さなければ当然時計も動かない。この作業を、リューズを回すなどの手作業で行うのが“手巻きモデル”で、着用時の腕の動きなどによって巻き上げを行うのが“自動巻きモデル”だ。
現在は自動巻きモデルが一般的になったため、残量についてそれほど意識せずともよくなったが、それでも時計が止まってしまうことはままあるだろう。特に週末に時計を着けずにいたら、月曜の朝に止まっていたという経験がある人は多いはずだ。
理論上、大きなゼンマイを使えば駆動時間は延長できるが、そもそも40mm程度の大きさしかない腕時計ではそれにも限界がある。そこで、時計メーカー各社は香箱(ゼンマイを収める部品)を2個に増やしたり、各パーツの小型化や配列を見直すことで大きな香箱を収めるスペースを捻出したりと、工夫を凝らした。
2000年代以降、特にその動きが顕著でロングパワーリザーブ、つまり長時間駆動を実現したモデルが増えてきた。
2017年にウブロから発表されたMO-05 フェラーリ・ラフェラーリ・サファイアは、11個もの香箱を搭載し、約50日間の駆動時間を実現した
なかには数十日間というようなロングパワーリザーブも存在するが、多くがコンセプトモデルか、購入できたとしても数千万円という代物。
こうしたモデルを普段使いとしてチョイスするのは正直なところ難しいが、一方で、技術の進歩によって普及価格帯でも70時間(約3日間)程度のパワーリザーブを備えるモデルが増えてきている。つまり金曜の夜に外しても月曜の朝までしっかり動き続けているというわけだ。
ビジネス用として時計をチョイスする場合、このクラスのロングパワーリザーブがあればかなり便利に使えるはずだ。
10万円台で狙えるロングパワーリザーブモデル
MIDO(ミドー)
マルチフォート クロノメーター1
1934年以来愛され続けるミドーの伝説的なコレクション“マルチフォート”にラインナップされたCOSCクロノメーター仕様機。シリコン製ヒゲゼンマイを採用したCal.80 Siを搭載し、最大80時間のパワーリザーブを実現している。
■Ref.M038.431.11.041.00。SS(42mm径)。10気圧防水。自動巻き(オートマチックMido Caliber 80 Si)。16万1700円
【問い合わせ先】
》ミドー公式サイト
https://www.midowatches.com/jp
TISSOT(ティソ)
ティソ ジェントルマン オートマティック
“紳士のコーディネイトに合う時計”をコンセプトにしたコレクション、ジェントルマンの最新作。シンプルかつ上品なデザインで、様々なシーンで着用できるのが魅力だ。こちらも最大80時間パワーリザーブのハイパフォーマンスを実現している。
■Ref.T127.407.11.041.00。SS(40mm径)。10気圧防水。自動巻き。10万4500円
【問い合わせ先】
》ティソ公式サイト
www.tissotwatches.com
文◎堀内大輔(編集部)