昨今の時計業界では、毎年のように新しい時計ブランドがいくつも誕生している。数万円台の時計を主力とするカジュアルなブランドから、1本数百万円もするようなハイエンドなブランドまで様々だが、心引かれる魅力をもったブランドというのは決して多くない。
そんななか、昨年デビューを果たしたブランドのなかで筆者が気になったブランドのひとつを紹介したい。
その名も、Chopin Watches(ショパンウオッチ)。
ブランド名にも採用されているショパンとは、偉大な音楽家として有名な、あのショパンのことである。
ポーランドを代表する有名な作曲家で偉大なピアニストとしても知られる音楽家、フレデリック・ショパンへのオマージュから誕生したブランドで、2019年4月にワルシャワのフレデリック・ショパン研究所を会場にデビューイベントを開催。国際的なジャーナリストをはじめ、限られたメンバーが招待され、そのファーストモデルがお披露目となった。
著名な人物の名を冠したブランドの場合、得てして名ばかりの安価な時計であることも少なくないが、ショパンウオッチは高いクオリティを伴ったまぎれもない高級時計ブランドだ。
ブランド創業者はミハエル・ドゥーニーン氏。彼は1950年代にポーランドに設立されたブウォニエ(Blonie Watches)という時計ブランドを復活させた人物で、フレデリック・ショパン研究所の協力を取り付け、ショパンの名前の使用、そして彼へのオマージュを形にした時計を製造する独占的なライセンスを取得。そして、2015年にショパンウオッチプロジェクトを立ち上げた。
時計のデザインは、エルメスやハリー・ウィンストン、グルーベル フォルセイなど、有名ブランドのデザインを手がけてきたデザインスタジオ、NEODESIS(ネオデシス)のデザイナー、アントワーヌ・チュミ氏が手がけるほか、近年、時計業界で存在感を増しているシュワルツ・エチエンヌ社をパートナーに迎えて専用ムーヴメントを搭載する力の入れよう。
ほかにも一流のサプライヤーの協力を得て、4年の歳月を経てハイクオリティな腕時計を完成させた。
そんなショパンウオッチの記念すべきファーストコレクションは“革命のエチュード”としても知られるピアノ独奏のための作品のひとつ、フレデリック・ショパンの練習曲ハ短調作品10-12の名を持つユニークなモデル。
譜表に着想を得た文字盤や、ピアノの鍵盤をイメージしたパワーリザーブインジケーターなど、なんともユニークなディテールが与えられている。
ショパンウオッチの際立った特徴でもあり、作曲家・ショパンの心を表現したという象徴的な深紅のテンワ。この色を表現するために、ムーヴメントを手がけたシュワルツ・エチエンヌでは数カ月を費やして、テンワに濃い赤を着色する方法を開発したという。
Chopin Watches(ショパンウオッチ)
ショパン オーパス 10 No.12
デザインはなかなか個性的だが、ムーヴメントにはシュワルツ・エチエンヌ製の高級ムーヴメントを採用するクオリティの高いモデルに仕上がっている。
■SS(43mm径)。50m防水。手巻き(Cal.MSE210)。世界限定56本。1万4500スイスフラン(日本円で約165万3000円)。
非常に興味をそそられるブランドと時計であるが、デビューイベントのニュース以降、実は目立った動きが見られなくなってしまった。
新興ブランドではデビューしたはいいものの、尻すぼみになってしまうことは珍しくないが、ショパンウオッチなかなか魅力的な時計を手がけているだけに、そのままフェードアウトという事態にならないことを願っている。
●掲載している日本円価格は、1スイスフラン=114円で計算、算出したものです。
●未上陸ブランドのため、日本にショパンウオッチの正規輸入代理店はありません。
文◎佐藤杏輔(編集部)
【問い合わせ先】
Chopin Watches公式サイト
https://chopinwatches.com