お手頃な“10万円以下”から“10万円台”“20万円台”そして“30万円台”まで、四つの価格帯で購入できる機械式腕時計を編集部がピックアップ。その一つひとつを編集部が実際に見て、触って、試着した、その感想を本音でレビューする。いま何が買いのモデルなのか。編集部のリアルな意見を、ぜひ購入の際の参考にしてもらいたい。
前回に続き、予算30万円台で購入できる機械式腕時計をセレクト!
【予算30万円台①】
ブランドの個性が発揮される価格帯
ほかにはない魅力。独自性に注目
》Model 4
WEMPE ヴェンペ
ツァイトマイスター トリプルカレンダー ムーンフェイズ
長年、高級宝飾店として培った審美眼と、エンドユーザーと直に接してきたからこそと言えるこだわりが詰まったヴェンペのツァイトマイスター シリーズ。本作はトリプルカレンダーとムーンフェイズを備え、ワンランク上のスーツスタイルを実現してくれる1本だ。静観な黒文字盤にシャープに磨き上げられた針やインデックスがきらりと光る、高級感あふれる意匠が魅力。これで30万円台という価格はかなりお買い得だ。
■Ref.WM35 0002。SS(42㎜径)。3気圧防水。自動巻き(ETA2892-A2ベース)。37万円(税抜き)
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【ケースサイド】各表示はケース四方に埋め込まれたボタンで操作する。リューズタイプを採用しなかったのは、美しいケースフォルムを追求したからだろう。
【実際に着けてみました】ETA社の汎用機を採用することでコストを抑える一方、これらを一度すべて分解し、ドイツ・クロノメーター検定に合格するレベルまでモディファイしたムーヴメントを搭載するなど、そのこだわりがすごい。やや大振りなサイズだが、手首になじみやすようラグをカーブさせており、装着感は上々だ。
【問い合わせ先】
シェルマン TEL.03-5568-1234
》シェルマン公式サイト
http://www.shellman-online.jp
》Model 5
ORIS オリス
ビッグクラウン プロパイロットタイマーGMT
代表シリーズであるビッグクラウンの新作GMTモデル。アラビア数字では珍しいアップライトインデックスを採用し優れた視認性を追求するほか、第2次世界大戦中にイギリス空軍のために作られた高機能素材ベンタイルをベルトに採用するなど、プロユースとしての本格的な作りが魅力。また見切り部分の24時間表示に合わせて、GMT針の先端を曲げるなど、細部の作りまでこだわっている。
■Ref.01 748 7756 4064-07 3 22 02LC。SS(44㎜径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.Oris 748、SW220-1ベース)。30万円(税抜き)
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【クラスプ】シートベルトからインスパイアされた“リフト”という独自のクラスプも秀逸。着脱が非常に容易で使い勝手はかなりいい。
【実際に着けてみました】ケースの直径は44㎜もあるのでやはりインパクトがかなりある。ただ堅牢な作りとなった本格仕様ながら約13㎜厚と意外に薄いため、着用感は悪くない。また文字盤は一見シンプルな構成だが、立体的な造形となっていることに加え、極端に中心に寄ったスモールセコンドが独創的な表情を生み出している。
【問い合わせ先】
オリス・ジャパン TEL.03-6260-6876
》オリス公式サイト
https://www.oris.ch/jp
》Model 6
NOMOS GLASHÜTTE ノモス・グラスヒュッテ
クラブ・ネオマティック 39 キャンパス
ノモス初のブレス仕様として2019年に発表された本作。ローマ数字とアラビア数字を組み合わせたキャンパスシリーズの特徴的なインデックスを採用した可愛らしいデザインながら、20気圧防水を備える薄型の自動巻きCal.DUW3001を搭載した実用仕様。ケースの厚みに合わせてブレスレットも薄く、軽やかな装着感を実現している。
■Ref.CL130011W239CPM。SS(39.5㎜径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.DUW3001)。37万円(税抜き)
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【ブレスレット】芯材に針金を巻きつけ、圧縮して成形されるブレスレット。可動が非常に滑らかで、優れたフィット感を実現しつつ、洗練された雰囲気を演出する。
【実際に着けてみました】ケースもブレスも薄い本作は、重量約85gとかなり軽量。またブレスレットは板状のコマで細かい構成となっているが、しっかりと設計されているのか、体毛を挟まない。着用時の快適さという点で意外と重要なポイントだ。またスライドレバーによって簡単に取り外しできる仕様になっている点もいい。
【問い合わせ先】
大沢商会 TEL.03-3527-2682
》ノモス・グラスヒュッテ公式サイト
https://nomos-glashuette.com/ja
》Model 7
MÜHLE GLASHÜTTE ミューレ・グラスヒュッテ
テトニアⅡ ウェルツェ
都市名の記されたインナーリングを回転させてセカンドタイムを読み取るシンプル構造のワールドタイムモデル。シンプルなぶん使用方法も簡単なため使い勝手はいいのだが、最近はこのタイプをあまり見かけなくなった。リーフ針を採用するなど上品な顔つきだが、ベルトとラグをネジ留めするなど、ミューレらしい堅牢な作りは健在である。
■Ref.M1-33-82-LB。SS(41㎜径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.SW330-1ミューレバージョン)。32万5000円(税抜き)
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【ケースバック】裏ブタはネジ込み式を採用。バックケースにある六つの穴に専用の工具をはめて開閉するタイプなのだが、その作りからも無骨さがうかがえる。
【実際に着けてみました】一見ミューレらしからぬデザインだが、細部に目を向けると、実用を重視する同社らしいこだわりが見て取れる。操作性を考慮した大振りなリューズもそのひとつだ。最近のワールドタイム機構は、ユーザービリティーを追求して複雑・高額化の傾向にある。これに伴いデザインにも変化が見られるが、本作のようなひと目でそれとわかるストレートなデザインもやはり捨てがたい。
【問い合わせ先】
サイプレストレーディング TEL.06-6459-4140
》本国公式サイト
https://www.muehle-glashuette.de/en/
文◎堀内大輔/写真◎笠井 修