グラスヒュッテ・オリジナルの新作も今回話題を呼んだもののひとつである。それもそのはず、同社としては初となるダイバーズウオッチとして、SeaQを発表したからだ。実はこれ、第2次世界大戦後のドイツ民主共和国、言わば共産政権時代の当時の国営企業だったGUB(グラスヒュッテ国営時計会社)で作られたという、当時のダイバーズウオッチを復刻させたものなのだ。
そして今回実機を見させていただいたのは、その中のグラスヒュッテ・オリジナルのアイコンでもある大型のデイト表示を備えたSeaQパノラマデイトである。太くて大型の飛びアラビア数字のインデックスや、先端が矢印型の分針などデザイン的特徴は、発表された1969年当時のオリジナルにかなり忠実に再現されている。
SeaQ パノラマデイト。Ref.1-36-13-01-80-34。SS(43.2mm径/ケース厚15.65mm)。300m防水。自動巻き(Cal. 36.13/毎時2万8800振動/パワーリザーブ100時間)。国内定価:144万1000円
このモデルは、デザイン性だけでなく、ダイバーズウオッチとしての実力も素晴らしい。ダイバーズウオッチの国際規格ISO6425はもちろんのこと、ドイツ工業規格DIN8306にも準拠する。加えて24時間耐久試験にも合格した本格派で、何と300mもの高い防水性能を誇る。
また、搭載されている自動巻きムーヴメントも特筆に値する。シリコン製ヒゲゼンマイに100時間パワーリザーブなど、“安定性”“高精度”“長時間駆動”、そして“美しさ”の四つを掲げて2016年に発表されたCal.36をベースに、ダイバーズ用に改良を加えたCal.36-13という高性能機が採用されているからだ。
また、このムーヴメントは、機留め(ネジ留め)でケースに固定するのではなく、カメラのレンズのようにバヨネットマウント方式で、ケースをムーヴメントに押し回すようにセットされている。ネジ留めよりも衝撃に強い優れた構造を持っており、耐久性という点でも大きなポイントと言えるだろう。
ラインナップは全部で3種類。ここに取り上げたSeaQパノラマデイトのほかに、1969年のオリジナルを忠実に復刻した69個限定のSeaQ 1969とレギュラーモデルのSeaQがある。
【古典的雰囲気を強調】サファイアクリスタル風防はドーム風防とまではいかないものの、ベゼルよりも若干出たボックスタイプでレトロな雰囲気がより強調されている。
【セラミック仕様で傷に強い】古典的な作りだが現代的な要素も取り入れベゼルインサートには傷が付きにくいセラミックを採用する。またケースからラグにかけてのラインも美しい。
【特徴的なクリスタルバック】裏ブタは開口部がとても広いためCal.36系の細部が見られるのはメカ好きにはたまらない仕様だろう。そのぶん強度を持たせるためか若干ガラスが張り出した個性的作りなのもおもしろい。
【実際に着けてみました】サイズは43.20mmで厚さも15.65mmとかなり大型だが、合成素材のベルトは手首になじんで着けた感じも悪くない。ただ、サイズ感は人それぞれ違うため特に手首の細い人は実機で確認を。また、時間も見やすく視認性の高さはもちろん、存在感もバツグンだ。そのためビジネスシーンには難しそうだが、カジュアルなスタイルなら、スイス製にはないドイツメイドならでは質実さが全体の作りに出ており、それはそれでさりげないアイコンとなるに違いない。
文◎菊地吉正(編集部)/写真◎笠井修/問い合わせ先、グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 TEL.03-6254-7266